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海外機関投資家から反対票を投じられないために
(12/09/18)

 上場後は海外の機関投資家に株式を保有されることを意識した経営をする必要がある。証券市場における「外人投資家」の存在感は高く、輸出企業でなくても、グローバルな視点をもった経営が必要となってくる。

 その際に参考になるのが、議決権行使助言会社の助言基準だ。「外人投資家」の場合、閉鎖的でわかりづらい日本企業の議決権行使に際して、こういった議決権行使助言会社の意見を参考にすることが少なくないからだ。

 たとえば、ISS社の場合、「日本向け議決権行使助言基準」をISSのホームページにおいて公表している。これを参考にすれば、「外人投資家」が議決権を行使する際の思考パターンを理解することができる。もちろん、国内機関投資家も、昔の「物言わぬ投資家」と異なり、議決権行使に際して、こういった助言基準を積極的に活用しており、ますます留意が必要だ。

 たとえば、配当性向は高すぎても低すぎてもいけない。剰余金の処分議案が配当性向に置き直して15%から100%までのレンジに収まるのであれば「賛成を推奨」し、100%を超えれば「財務の健全性への影響を考慮」して「議案の内容を精査する」としている。

 また、取締役の選任議案に関しては、総会後の取締役会に社外取締役が一人もいない場合、経営トップである取締役の選任議案について「反対を推奨」するとしている。また、「親会社や支配株主を持つ会社において、ISSの独立性基準を満たす社外取締役が二名未満の場合、経営トップである取締役」や「前会計年度における取締役会の出席率が75%未満の社外取締役」の選任議案についても同様に反対票が投じられる可能性が高い。

 退職慰労金については、「対象者に社外取締役もしくは社外監査役が含まれる場合」や「個別の支給額もしくは支給総額が開示されない場合」「株価の極端な下落や業績の大幅な悪化など経営の失敗が明らかな場合や、株主の利益に反する行為に責任があると判断される者が対象者に含まれる場合」の「いずれかに該当する場合を除き、原則として賛成を推奨する」としている。退職慰労金の支払に際しては留意が必要だ。

 また、ストックオプションについては、「提案されているストックオプションと発行済ストックオプション残高を合計した希薄化が、成熟企業で5%、成長企業で10%を超える場合」は反対を推奨される可能性が高い。上場準備企業としては、主幹事証券にストックオプションによる希薄化が過大である旨指摘される前に、自律的に資本政策を見直したいものだ。

 その他、取締役の報酬については業績連動報酬の導入が望ましい等「外人投資家」の意向を十分に加味した上で、海外機関投資家から反対票を投じられないための、議案作りをしていく必要がある。



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