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コベナンツの開示、どうあるべき?
(12/08/23)

 日本証券業協会の社債市場の活性化に関する懇談会はこのほど、「社債市場の活性化に向けた取組み」を公表した。これは、社債市場の活性化に向けた具体的な取組みを提示したもので、

第1部会(証券会社の引受審査の見直し等)
第2部会(コベナンツの付与及び情報開示等)
第3部会(社債管理のあり方等)
第4部会(社債の価格情報インフラの整備等)

のそれぞれについて、検討結果がとりまとめられている。

 とりわけ、第2部会の担当箇所においては、投資家が社債発行企業の社債やローンのコベナンツ・債務の状況等の情報を把握するための情報開示のあり方が検討されており、興味深い。

 報告書では、まず、現在の有価証券報告書等による継続開示制度の概略がまとめられている。これによると、利害関係人が企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する適正な判断を行うために必要と認められる事項があるときは、「追加情報の注記」等へ記載が必要となる。

 そして、日本公認会計士協会の実務指針では、「例えば借入金や社債等に付された財務制限条項が財務諸表等に重要な影響を及ぼすと認められる場合など、利害関係人が会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関して適切な判断を行う上で必要と認めた場合には、追加情報として財務諸表等に注記しなければならない。」とされている。

 また、決算日後、企業の翌事業年度以降の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす事象が発生した場合は、「重要な後発事象の注記」が必要となる。そして、日本公認会計士協会の後発事象に関する監査上の取扱いでは、開示後発事象の例示として、「借換え又は借入条件の変更による多額な負担の増減、多額な資金の借入、重要な資産の担保提供など」が挙げられている。

 さらに、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に著しい影響を与える事象が発生した場合には臨時報告書における開示が必要となる。

 もっとも、報告書では、現行制度のもとでは「有価証券報告書等において銀行ローンのコベナンツ及び当該コベナンツが付されている債務の残高等が開示されることはほとんどないというのが現状である」といった指摘がある旨記載されている。

 そこで、報告書では、コベナンツに関する情報を開示する際の判断基準や開示内容を例示した事例集等の検討を進め、策定次第、報告・公表を行う予定としている。また、社債の発行に当たり、関係者の参考となるようコベナンツの例示をまとめた「コベナンツモデル(参考モデル)」も検討し、公表する予定だ。



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