財務報告関連実務ニュース


ゼロ連結の誤用に注意
(11/11/14)

 東京電力のファミリー企業に関する一部報道において「ゼロ連結」という言い回しが誤用されているので、注意が必要だ。本来、ゼロ連結とは、連結財務諸表作成に際して、資本関係がないにもかかわらず、支配力基準により実質的に子会社であると認定される会社そのもの又はそういった会社を連結財務諸表に取り込むことを指す。この点、東京電力関連の報道において「ゼロ連結」の定義として、「グループの中核会社との取引や役員受け入れなどを通じて、密接な関係にある企業。資本関係がなく(ゼロ)、グループ(連結)会社を記載する中核会社の有価証券報告書には記載されていないため、こう呼ばれる。」といった報道が一部において行われている。「資本関係がない」という点はあっているものの、「(連結)会社を記載する中核会社の有価証券報告書には記載されていない」という点が誤っている。「ゼロ連結」は非連結子会社とは異なり、連結対象子会社であるからだ。よって、東京電力の場合、連結対象でない会社について、実質的には支配下にあることから、連結対象とすべき(すなわちゼロ連結すべき)であるという文脈で用いられていることになる。

 郵政民営化の過程で「郵政事業の関連法人の整理・見直しに関する委員会」が一部のファミリー企業をゼロ連結会社として認定し、連結対象に含めるとともに100%子会社化を図っていったという経緯がある。東京電力についても郵政事業と同様、ファミリー企業とのなれあい取引により不適切な対価設定がされている可能性が高いことから、まずはゼロ連結により東京電力の実態把握が急がれる。そのうえで、必要に応じて資本関係も整理して100%子会社化することで「見える化」を図り、不適切な対価設定の誘因をなくしていく必要があろう。

 「ゼロ連結」の検討が必要となるのは、何も東京電力に限ったことではない。上場準備企業であっても同様である。社長や社長親族が株式を有する会社に利益が落ちるようなスキームを維持したままでは、上場審査をパスすることは不可能。支配力基準を慎重に適用し、必要に応じて「ゼロ連結」の対象にするとともに、資本関係又は取引関係の整理を早急に図るべきといえる。



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