財務報告関連実務ニュース


ライツ・オファリング、
会社法上の株主平等原則に反しない見解
(11/10/14)

 金融庁はこのほど、「金融庁・開示制度ワーキング・グループ法制専門研究会報告〜ライツ・オファリングにおける外国証券規制への対応と株主平等原則の関係について〜」を公表した。一定の要件を満たす場合には、ライツ・オファリングの際に外国居住株主による新株予約権の行使を制限しても株主平等原則に抵触しないとする見解を示している。

 ライツ・オファリングとは、「第三者割当増資」などと同様、企業の増資手法の1つであり、株主全員に新株予約権を無償で割り当てることによる増資手法のこと。すべての既存の株主に新株予約権無償割当てを行い、行使して資金を払い込んだ株主は新株を取得、行使しない株主は予約権を市場で売却する制度であり、第三者割当増資などに比べて、株式の希薄化をできる限り回避できる手法といわれている。

 ただ、ライツ・オファリングを適用するにはいくつかの問題点がある。その1つが外国の証券規制への対応である。

 金融庁の開示制度ワーキング・グループが1月29日に公表した「新株予約権無償割当てによる増資(いわゆる「ライツ・オファリング」)に係る制度整備について〜」では、外国の証券規制によっては、当該国の居住者である株主がライツ・オファリングに際して割り当てられた新株予約権を行使することにより、発行者が当該国の当局への登録や継続開示を行うことが必要となる可能性がある点を指摘している。その上で、欧州と同様、わが国においても、外国の証券規制の過度の適用を回避するために外国居住株主による新株予約権の行使を制限することが株主平等原則に抵触しないことについて、現行法の下における考え方の整理が図られることが適当である旨が明記されていた。

 この点について、開示制度ワーキング・グループ法制専門研究会が取りまとめた報告書では、一定の要件を満たす場合には、ライツ・オファリングの際に外国居住者株主による新株予約権の行使を制限しても株主平等原則に抵触しないとする解釈を示している。

 具体的には、資金調達のためにライツ・オファリングを実施する場合(発行会社の支配権が争われている場面は対象外)を対象とした上で、1)特定外国株主への行使制限を行わずにライツ・オファリングを実施した場合に特定外国の当局に対する登録等の手続を行わない場合には特定外国の規制に抵触するおそれがあり、これらの手続を履行する場合にはコストや事務負担が生じ、資金調達に支障を来たす場合がある、2)ライツ・オファリングに係る新株予約権がわが国の金融商品取引所に上場されており、特定外国株主も新株予約権を市場で売却することができるといった2つの要件を満たす場合には、株主平等原則には抵触しないとしている。

 なお、ライツ・オファリングによる行使制限については、株主総会の決議は必須ではない考えを示している。



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