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手取金の使途に関する届出書の審査方針が明確化
(10/05/10)

 金融庁はこのほど、「企業内容等の開示に関する留意事項について」(企業内容等開示ガイドライン)の一部改正案を公表した。今回の改正案では、「共通事項」が新設されるとともに、第三者割当時の開示関係で基本ガイドライン・個別ガイドラインの拡充が図られている。


「共通事項」が新設

 まず、企業内容等開示ガイドラインに「A.共通事項」として開示事務における共通的な運用方針等が明確化されている。これによると、有価証券届出書等の事前相談が明文化されるとともに、金融庁・財務局・証券取引等監視委員会・金融商品取引所の連携が明確化されている。さらに、「開示内容が、投資者の投資判断に当たっての必要性や社会常識等に照らして判断されたものであることが重要であり、開示しようとする項目・事項が個別具体的に規定されていないことや前例がないこと等をもって、開示する必要がないと考えることがないように留意する必要がある」としている。また、「開示書類に係る訂正命令や発行開示に係る効力停止命令等の不利益処分の実施に当たっても、内閣府令やガイドライン等の規定において、個別具体的に列挙された事項のみが開示されていれば十分と考えるのではなく、法令の趣旨を踏まえ、常に公益又は投資者保護の観点から、当該処分の是非及び内容を検討する必要がある」としている。

基本ガイドラインの拡充

 また、「B.基本ガイドライン」として、発行開示(有価証券届出書等)に係る実務上の運用指針及び処分の基準等が明確化されている。ここでは、無届募集等に関する情報を入手した場合の対応方針が明確化され、「無届けで募集を行っている者に対する警告書(案)」や「無届けで募集を行っているおそれがある者に対する照会書(案)」も示されている。また、「有価証券の内容や勧誘の実態を含む諸状況に照らし、実質的に同一種類と認められる有価証券を、6ヶ月以内に、50名未満の相手方に対し複数回に分けて勧誘することにより、少人数向け勧誘とはみなされないにもかかわらず、有価証券届出書等を提出しない場合」は無届募集等となる旨注意を喚起している。さらに、有価証券届出書の様式上の項目について、例えば「経営上の重要な契約等」等について記載すべき事実がない場合であっても、項目を省略しない(記載内容については該当がない旨の記載を行う)旨明示されるとともに、「手取金の使途」の欄については、「例えば、一旦、預貯金とした後、設備資金に使用するなど、直接の使途に加え、最終的な使途が決定されている場合は両者とも記載するなど、個別の事情等に応じ詳細な記載を行う」としている。

 なお、継続開示(有価証券報告書等)に係る実務上の運用指針等の明確化については、今回の改正後に検討・実施を予定している。

第三者割当時の開示に関する審査上の留意点の明確化

 さらに、「C.個別ガイドライン」として、III「株券等発行に係る第三者割当」の記載に関する取扱いガイドラインが新設され、有価証券届出書の「株券等発行に係る第三者割当」の開示に関する審査上の留意点等の明確化が図られている。「手取金の使途」の審査に際しては、「手取金使途の区分ごとの内容、金額及び支出予定時期について、実態に即した記載となっているかという観点から、記載内容を審査する」として、

・資金繰り表 ・事業計画書
・返済計画表(使途が借入金等の返済の場合)
・各借入先別の月次返済計画を示す資料

等を用いて審査を行うとしている。

 加えて、「提出者が割当予定先の紹介、あっせん等を行った第三者に支払う手数料等の対価であっても、例えば、払込金額の総額に対する手数料の割合が著しく高い等、その態様に応じ、手取金の使途として記載する必要があると考えられる」としている。いわゆる増資マフィアの活動を開示面から制限することを視野に入れたものといえる。



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