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個別FSでも包括利益の表示を求める案公表
(10/02/03)

 企業会計基準委員会は昨年末、「包括利益の表示に関する会計基準(案)」を公表した。これは、財務諸表における包括利益及びその他の包括利益の表示について定めることを目的とする会計基準に関する公開草案で、会計基準の国際的なコンバージェンスの観点から導入されるもの。あわせて、「連結財務諸表に関する会計基準」等において関連する項目についての改正案も公表されている。

 公開草案によると、「包括利益」とは、ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいう。ここで、当該企業の純資産に対する持分所有者には、当該企業の株主のほか当該企業の発行する新株予約権の所有者が含まれ、連結財務諸表においては、当該企業の子会社の少数株主も含まれる。また、「その他の包括利益」とは、包括利益のうち当期純利益及び少数株主損益に含まれない部分をいう。

 包括利益は、個別財務諸表においては、当期純利益にその他の包括利益の内訳項目を加減して、計算される。なお、連結財務諸表においては、少数株主損益調整前当期純利益にその他の包括利益の内訳項目を加減して計算される。

 包括利益を表示する計算書は、2通りある。すなわち、当期純利益を計算する損益計算書と、包括利益を計算する包括利益計算書とをわけて表示する形式(2計算書方式)と、当期純利益の計算と包括利益の計算を1つの計算書(損益及び包括利益計算書)で表示する形式(1計算書方式)の2通りである。どちらを選ぶかは任意とされる。

 適用は平成22年4月1日以後開始する事業年度の年度末に係る財務諸表から。ただし、当該事業年度の期首から適用することができる。また、平成22年6月30日以後に終了する事業年度の年度末に係る財務諸表からの早期適用も可。

 なお、今回の公開草案に関しては、産業界を代表する委員より「個別財務諸表における包括利益の表示を強制する今回の会計基準案については、市場関係者からの十分なコンセンサスを得ていない」ことを理由として反対する意見が付されている。



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