目次 I−1

 T 法人にかかる税制はここが変わる!
 1 競争力強化のための研究開発税制等の見直し
 研究開発税制(支出した試験研究費について、一定の税額控除が受けられる制度)について総額型(下記(1)①)の控除率が試験研究費の増減に応じたものとされます。また、IoT、ビッグデータ、人工知能等を活用した「第4次産業革命」による新たなビジネス開発を後押しする観点から、研究開発税制の対象に、「第4次産業革命型」のサービス開発のための試験研究に係る一定の費用が新たに追加されます。
(1)研究開発税制の概要
 研究開発税制は、青色申告法人を対象とするもので、次の4つの制度によって構成されています(青色申告の個人においても同様)。
① 試験研究費の総額に係る税額控除制度
 「総額型」と呼ばれるもので、損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、その総額の一定割合の金額を法人税額から控除することを認めるものです。
② 特別試験研究費に係る税額控除制度
 「オープンイノベーション型」と呼ばれるもので損金の額に算入される特別試験研究費の額がある場合に、その総額の一定割合の金額を法人税額から控除することを認めるものです。
③ 中小企業技術基盤強化税制
 損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、試験研究費の総額に係る税額控除制度(上記①)との選択適用で、その試験研究費の額の総額の一定割合の金額を法人税額から控除することを認めるものです。
④ 試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度(時限措置)
 上記①、②及び③の制度とは別枠で、一定の要件に該当する場合、損金の額に算入される試験研究費の額の一定割合の金額を法人税額から控除することを認めるものです。これには増加型と高水準型があります。
(2)改正の概要
① 試験研究費の総額に係る税額控除制度((1)①)について、税額控除率(現行:試験研究費割合に応じ8〜10%)を次の試験研究費の増減割合(注)に応じた税額控除率(上限10%)とする制度に改組されます。これにより、試験研究費の増加幅が大きいほど、減税額が増えることになります。
増減割合が5%超9%+(増減割合−5%)×0.3
増減割合が5%以下9%−(5%−増減割合)×0.1
増減割合が−25%未満6%
(注)      試験研究費の額ー比較試験研究費の額(=試験研究費増減差額)
増減割合=
             比較試験研究費(※)の額
(※)比較試験研究費…適用開始年度の日前3年以内に開始した各事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額を平均した額
② (1)④の増加型又は高水準型を選択適用できる制度について、増加型に係る税額控除が平成29年3月31日までの間に開始する事業年度までで廃止(適用期間の終了)された上、高水準型の適用期限が2年延長されて、平成31年3月31日までの間に開始する事業年度までとされます。
③ 2年間の時限措置として、次の措置が講じられます。
試験研究費の総額に係る税額控除制度((1)①)の税額控除率の上限が14%(原則:10%)とされます。
中小企業技術基盤強化税制((1)③)について、試験研究費の増加割合(注)が5%を超える場合には、次のとおりとされます。
(イ)税額控除率(12%)に、増加割合から5%を控除した割合に0.3を乗じて計算した率を加算する。ただし、税額控除率の上限は17%とする。
(ロ)控除税額の上限(当期の法人税額の25%)に当期の法人税額の10%を上乗せする。なお、平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除制度((1)④の高水準型)との選択適用とする。
(注)      (試験研究費の額ー比較試験研究費の額)(マイナスのときはゼロ)
   増減割合=
                    比較試験研究費の額
試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合には、平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除制度((1)④の高水準型)の適用に代えて、次の措置が適用できることとされます。
(イ)試験研究費の総額に係る税額控除制度について、控除税額の上限(当期の法人税額の25%)に、当期の法人税額に試験研究費割合から10%を控除した割合を2倍した割合(10%が上限)を乗じて計算した金額を上乗せする。
(ロ)中小企業技術基盤強化税制について、控除税額の上限(当期の法人税額の25%)に、当期の法人税額に試験研究費割合から10%を控除した割合を2倍した割合(10%が上限)を乗じて計算した金額を上乗せする。なお、上記ロ(ロ)との選択適用とする。
(注)「平均売上金額」………当期を含む4年間の売上金額の年平均額
「試験研究費割合」……試験研究費の額÷平均売上金額
④ 試験研究費の範囲について、対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究のために要する一定の費用が加えられます。
 この「一定の費用」とは、対価を得て提供する新たな役務(以下「新サービス」といいます。)の開発を目的として行う次のイからニまでの業務に要する原材料費、人件費(注1)及び経費(注2)並びに委託費(注3)をいいます。
(注1)その業務に専ら従事する情報の解析に関する専門的な知識を有すると認められる者(以下「情報解析専門家」といいます。)に係るものに限ります。
(注2)外注費にあっては、これらの原材料費及び人件費並びに外注費以外の経費に相当する部分に限ります。
(注3)これらの原材料費、人件費及び経費に相当する部分に限ります。
大量の情報を収集する機能を有し、その全部又は主要な部分が自動化されている機器又は技術を用いて行われる情報の収集
その収集により蓄積された情報について、一定の法則を発見するために、情報解析専門家により専ら情報の解析を行う機能を有するソフトウエア(これに準ずるソフトウエアを含む。)を用いて行われる分析
その分析により発見された法則を利用した新サービスの設計
その発見された法則が予測と結果の一致度が高い等妥当であると認められるものであること及びその発見された法則を利用した新サービスがその目的に照らして適当であると認められるものであることの確認
特別試験研究費の額に係る税額控除制度((1)②)について、次の見直しが行われます。これにより、オープンイノベーション型の使い勝手が向上します。
特別試験研究費の対象となる共同研究及び委託研究に係る相手方が支出する費用で自己が負担するものについて、その費用の限定(現行:原材料費、人件費、旅費、経費及び外注費)が廃止され、これらの研究に要した費用とされます。
契約変更前に支出した費用について、その契約に係るものであることが明らかであり、かつ、その支出日と契約変更日が同一の事業年度内にある場合には、特別試験研究費の対象となることが明確化されます。
その事業年度における特別試験研究費の額であることの相手方による確認について、費用の明細書と領収証等との突合を要しないこととされます。



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