【1】建物附属設備及び構築物等の償却方法の見直し
減価償却制度は、建物等の減価償却資産の取得に要した金額を、一定の方法(定額法や定率法等)により、各年度に費用配分する制度です。定率法は定額法に比べて、早期に多額の償却ができるという特徴があります。建物附属設備や構築物といった投資拡大に影響の少ないものについて、減価償却方法が定額法に一本化されます。 |
平成28年4月1日以後に取得をする次の減価償却資産について、定率法が廃止され、それぞれ次の方法とする見直しが行われます(所得税についても同様です。)。
資産の区分 |
償却方法(法人) |
現 行 |
改正案 |
建物附属設備及び構築物
(鉱業用のこれらの資産を除く。) |
定率法(法定)(※)
又は
定額法(選択) |
定額法のみ |
鉱業用減価償却資産
(建物、建物附属設備及び構築物に限る。) |
生産高比例法(法定)
又は
定額法(選択)又は
定率法(選択) |
生産高比例法(法定)
又は
定額法(選択) |
(注)リース期間定額法、取替法等は存置されます。
(※)個人の場合は、定額法が法定で定率法が選択です。
改正 の 影響 |
該当資産の取得にあたり、初期の税負担が従来よりも増えることがあります。 |
【2】中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の延長等
この特例は、中小企業者等が取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得等して事業の用に供した場合に、一定の要件のもと、年間300万円までを全額損金に算入することができる制度です。 |
本特例は平成28年3月31日で廃止予定でしたが、マイナンバーや消費税複数税率対応で必要な少額資産の取得等に活用できるとの趣旨から、その適用期限が平成30年3月31日まで2年延長されます。ただし、対象となる法人から、常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人が除外されます。
実務上のポイント
平成28年4月1日以後に取得等及び事業供用したものについては、中小企業者等であっても従業員数基準で適用できないケースがありますので、注意が必要です。 |
【3】環境関連投資促進税制の見直しと延長
この制度は、新品のエネルギー環境負荷低減推進設備等の取得等をして、1年以内に国内の事業の用に供した場合には、その事業供用年度において、取得価額の30%の特別償却(又は即時償却)ができ、中小企業者等にあっては、特別償却と選択で取得価額の7%の税額控除が認められるという制度です。対象設備が重点化された上で、2年延長されます。 |
この環境関連投資促進税制(エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度)について、次の見直しが行われた上、その取得等の期限が平成30年3月31日まで2年延長されます。
(1) |
風力発電設備について即時償却を廃止 |
(2) |
固定価格買取制度の認定を受けた太陽光発電設備(いわゆる売電用)を対象資産から除外し、同認定を受けていない同設備(出力10kw以上:自家用)が追加 |
(3) |
税額控除の対象資産から車両運搬具(電気自動車等)を除外 |
実務上のポイント
他に、太陽光発電設備等に関する固定資産税についても、優遇措置が見直されます。 |
【4】 |
中小企業者等が生産性向上設備を取得した場合の固定資産税の課税標準2分の1軽減措置の創設 |
地域経済の活性化に向けて、地域の中小企業による設備投資の促進を図るため、固定資産税の時限的な特例措置が創設されます。初めての固定資産税での設備投資減税で、赤字法人にも大きな効果があると期待されます。 |
中小企業の生産性向上に関する法律(仮称)の制定を前提に、一定の中小企業者等が、同法の施行の日から平成31年3月31日までの間において、同法に規定する認定生産性向上計画(仮称)に記載された生産性向上設備(仮称)のうち一定の機械及び装置の取得をした場合には、その機械及び装置に係る固定資産税について、課税標準を最初の3年間価格の2分の1とする措置が講じられます。
(注) |
上記の「一定の機械及び装置」とは、次の(1)から(3)までのいずれにも該当するものとされます。 |
(1) |
販売開始から10年以内のもの |
(2) |
旧モデル比で生産性(単位時間当たりの生産量、精度、エネルギー効率等)が年平均1%以上向上するもの |
(3) |
1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの |
実務上のポイント
中小企業への配慮から、生産性向上設備投資促進税制の適用要件(A類型で機械及び装置の場合)である(1)最新モデル、(2)10年以内に販売開始、(3)旧モデル比で1%以上の生産性向上、(4)160万円以上のうち、(1)の要件が除外されます。 |
【5】生産性向上設備投資促進税制の終了
この制度は、青色申告法人が、特定生産性向上設備等の取得等をして事業の用に供した場合に、取得価額の50%(又は25%)の特別償却又は4%(又は2%)の税額控除を受けられるというものです。平成29年3月31日をもって終了となります。平成28年3月31日までの期間は、即時償却又は税額控除の上乗せ措置があります。 |
この生産性向上設備投資促進税制(生産性向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度)は、予定どおり適用期限(平成29年3月31日までに取得等かつ国内の事業に供用)をもって廃止することとされ、関係規定が削除されます。
■生産性向上設備投資促進税制の特別償却又は税額控除
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現 行 → 予定どおり廃止 |
平成26年1月20日から
平成28年3月31日までの
取得等かつ事業供用 |
平成28年4月1日から
平成29年3月31日までの
取得等かつ事業供用 |
機械装置など |
即時償却 又は
5%税額控除 |
50%特別償却 又は
4%税額控除 |
建物、構築物 |
即時償却 又は
3%税額控除 |
25%特別償却 又は
2%税額控除 |
改正 の 影響 |
投資を促進する特例の廃止を明確化することで、企業に対して期限内の設備投資を後押しする趣旨によるものです。平成28年3月31日までに取得等及び事業供用すれば即時償却、同年4月1日以後は50%(25%)の特別償却です。計画的な設備投資を検討しましょう。 |
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