目次 III-4


4 その他の所得税制関連の改正

【1】日本国外に居住する親族に係る扶養控除等の書類の添付等義務化

(1)  確定申告において、非居住者である親族に係る扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除又は障害者控除の適用を受ける居住者は、親族関係書類及び送金関係書類を確定申告書に添付し、又は確定申告書の提出の際提示しなければならないこととされます。ただし、下記(2)又は(3)により提出し、又は提示したこれらの書類については、添付又は提示を要しないこととされます。

(2)  給与等又は公的年金等の源泉徴収において、非居住者である親族に係る扶養控除、配偶者控除又は障害者控除(以下「扶養控除等」といいます。)の適用を受ける居住者は、親族関係書類を提出し、又は提示しなければならないこととされます。

(3)  給与等の年末調整において、非居住者である親族に係る扶養控除等の適用を受ける居住者は送金関係書類を提出し、又は提示しなければならないこととし、非居住者である配偶者に係る配偶者特別控除の適用を受ける居住者は、親族関係書類及び送金関係書類を提出し、又は提示しなければならないこととされます。

■用語の意義
親族関係書類 次の(1)又は(2)のいずれかの書類
(1)  戸籍の附票の写しその他国又は地方公共団体が発行した書類でその非居住者がその居住者の親族であることを証するもの及びその親族の旅券の写し
(2)  外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類で、その非居住者がその居住者の親族であることを証するもの(その親族の氏名、住所及び生年月日の記載があるものに限ります。)
送金関係書類 その年における次の(1)又は(2)の書類で、その非居住者である親族の生活費又は教育費に充てるためのその居住者からの支払が、必要の都度、行われたことを明らかにするもの
(1)  金融機関が行う為替取引によりその居住者からその親族へ向けた支払が行われたことを明らかにする書類
(2)  いわゆるクレジットカード発行会社が交付したカードを提示してその親族が商品等を購入したこと及びその商品等の購入代金に相当する額をその居住者から受領したことを明らかにする書類
(注)  親族関係書類又は送金関係書類が外国語により作成されている場合には、訳文を添付等しなければなりません。

適用期日 この改正は、平成28年1月1日以後に支払われる給与等及び公的年金等並びに平成28年分以後の所得税について適用されます。


【2】企業年金制度等の見直しに伴う税制上の所要の措置

 確定拠出年金法等の改正を前提に、個人型確定拠出年金への小規模事業主掛金納付制度(仮称)の創設、個人型確定拠出年金の加入可能範囲の拡大及び企業年金等のポータビリティの拡充等に伴う税制上の所要の措置が講じられます。

  確定拠出年金法等の改正 税制上の措置
(1) 個人型確定拠出年金への小規模事業主掛金納付制度の創設 事業主が拠出する確定拠出年金法の小規模事業主掛金(仮称)について、現行の確定拠出年金の事業主掛金と同様に、従業員に対する給与所得に係る収入金額に含まれないものとされます。
(2) 個人型確定拠出年金の加入可能範囲の拡大 個人型確定拠出年金制度の加入者に追加される「企業年金加入者」、「公務員等共済加入者」及び「第三号被保険者」について、現行の個人型確定拠出年金制度に係る税制上の措置が適用されます。
なお、個人型確定拠出年金制度の加入者に追加される者の拠出限度額については、次のとおりとされます。
 企業型確定拠出年金加入者(他の企業年金がない場合):年額24万円
 企業型確定拠出年金加入者(他の企業年金がある場合):年額14.4万円
 確定給付型年金のみ加入者及び公務員等共済加入者:年額14.4万円
 第三号被保険者:年額27.6万円
(注)  上記イ及びロの企業型確定拠出年金加入者については、その者が(1)マッチング拠出を行わないこと及び(2)個人型確定拠出年金制度の加入者になることができることについて、企業型確定拠出年金の規約に定めがある場合にのみ個人型確定拠出年金制度への加入が可能とされます。この場合のその企業型確定拠出年金制度の拠出限度額(他の企業年金がない場合:年額66万円、他の企業年金がある場合:年額33万円)は、他の企業年金がない場合は年額42万円、他の企業年金がある場合は年額18.6万円とされます。
(3) 制度間のポータビリティの拡充
確定拠出年金制度から確定給付企業年金制度に年金資産の移換がされた場合並びに合併等に伴い確定拠出年金制度及び確定給付企業年金制度と中小企業退職金共済制度間で年金資産等の移換がされた場合の移換後の各制度における給付等について、現行の税制上の措置が適用されます。
中小企業退職金共済法等の改正を前提に、事業主の申出による特定退職金共済制度から中小企業退職金共済制度への掛金等の移換、事業主が中小企業者でなくなったことによる退職金共済契約の解除に伴う中小企業退職金共済制度から確定拠出年金制度への解約手当金相当額の資産の移換並びに被共済者の特定業種退職金共済制度間又は特定業種退職金共済制度及び一般の中小企業退職金共済制度間の移動に伴う所要の措置が講じられるほか、移換又は移動後の各制度における給付等について、現行の税制上の措置が適用されます。


【3】その他

(1) 上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例等の対象となる上場株式等及び特定公社債について、次の措置が講じられます。
 上場株式等の範囲に、特定受益証券発行信託の受益権で公募のものが加えられます。
 発行する社債が特定公社債となる金融商品取引業を行う法人の範囲から、第一種少額電子募集取扱業者が除外されます。
(注) この改正は、平成28年1月1日以後に行う上場株式等の譲渡について適用されます。
(2) 山林所得に係る森林計画特別控除について、山林の伐採又は譲渡に係る収入金額が2,000万円を超える者の2,000万円を超える部分(現行:3,000万円を超える者の3,000万円を超える部分)の控除率が10%とされた上、その適用期限が3年延長されます。
(注) この改正は、平成28年分以後の所得税について適用されます。

 

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