目次 II-2


2 国境を越えた役務の提供に対する消費税制度の見直し

【1】改正のねらい

 現在、海外からのインターネット等を通じた電子書籍・音楽・広告の配信やクラウドサービス等の役務の提供には、消費税が課税されていません。一方、同一の役務の提供であっても、国内からの役務の提供には消費税が課税されています。そこで、内外の競争環境の公平性・中立性を確保する観点から、海外からのインターネット等を通じた役務の提供に消費税を課税することとされます。

■現行の消費税制度の課題
現行の消費税制度の課題
(出典:経済産業省「平成27年度 経済産業関係 税制改正について」)

■改正後の課税方式のイメージ
改正後の課税方式のイメージ
(出典:経済産業省「平成27年度 経済産業関係 税制改正について」)

 具体的には、国境を越えた役務の提供に対する消費税制度が、以下のとおり見直されます。


【2】内外判定基準の見直し

(1)対象取引

 電子書籍・音楽・広告の配信等の電気通信回線を介して行われる役務の提供を「電気通信役務の提供」(仮称。以下同じです。)と位置付け、内外判定基準が役務の提供に係る事務所等の所在地から、役務の提供を受ける者の住所地等に見直されます。

(注)  電気通信役務の提供には、電気通信役務の提供以外の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供や、単に通信回線を利用させる役務の提供は、含まれません。

(2)その他

電気通信役務の提供には、著作物の利用の許諾に該当する取引が含まれることが明らかにされます。
上記(1)の見直しに伴い、現行の内外判定に係る規定について所要の整備が行われます。


【3】課税方式の見直し

(1)事業者向け電気通信役務の提供(リバースチャージ方式の導入)

 国外事業者が行う電気通信役務の提供のうち、その役務の性質又はその役務の提供に係る契約条件等により、その役務の提供を受ける者が事業者であることが明らかなものを「事業者向け電気通信役務の提供」と位置付け、その取引に係る消費税の納税義務を役務の提供を受ける事業者に転換することとされます(リバースチャージ方式の導入)。

(注)  上記の「国外事業者」とは、所得税法上の非居住者である個人事業者及び法人税法上の外国法人をいいます。

イ リバースチャージ方式の導入に係る課税対象、納税義務者の規定の見直し
消費税の課税対象である資産の譲渡等から事業者向け電気通信役務の提供が除かれるとともに、事業として他の者から受けた事業者向け電気通信役務の提供(以下「特定仕入れ」(仮称)といいます。)が課税対象とされます。
納税義務の対象となる課税資産の譲渡等から事業者向け電気通信役務の提供が除かれるとともに、国内において行った課税仕入れのうち特定仕入れに該当するもの(以下「特定課税仕入れ」(仮称)といいます。)が納税義務の対象とされます。
(注) 事業者向け電気通信役務の提供を受ける免税事業者については、納税義務は生じません。

ロ 事業者向け電気通信役務の提供を行う国外事業者の義務
 国内において事業者向け電気通信役務の提供を行う国外事業者は、その役務の提供に際し、あらかじめ、その役務の提供に係る特定課税仕入れを行う事業者が消費税の納税義務者となる旨を表示しなければなりません。

(2)消費者向け電気通信役務の提供

 国外事業者が行う電気通信役務の提供のうち事業者向け電気通信役務の提供以外のもの(以下「消費者向け電気通信役務の提供」(仮称)といいます。)については、その国外事業者が納税義務者となります。


【4】適正課税を確保するための経過的な措置

(1)国外事業者から受けた電気通信役務の提供に係る仕入税額控除の制限

 当分の間、国外事業者から提供を受けた消費者向け電気通信役務の提供については、その課税仕入れに係る消費税につき、仕入税額控除制度の適用が認められません。ただし、下記(2)の登録国外事業者に該当する者から受けた消費者向け電気通信役務の提供については、当該登録国外事業者の登録番号等が記載された請求書等の保存等を要件として、その課税仕入れに係る消費税につき仕入税額控除制度の適用が認められます。

(2)登録国外事業者制度の創設

登録国外事業者は、次に掲げる要件を満たす一定の国外事業者(事業者免税点制度の適用を受けない者に限ります。)とされ、納税地を所轄する税務署長を経由して国税庁長官に申請書を提出し、国税庁長官の登録を受けた事業者とされます。
(イ)  国内において行う電気通信役務の提供に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地が国内にあること又は消費税に関する税務代理人(通法74の9丸数字3二)があること。
(注)  国税通則法第117条第1項(納税管理人)の規定の適用を受ける事業者にあっては、納税管理人を指定している場合に限るものとされます。
(ロ) 国税の滞納がないこと及び登録国外事業者の登録取消しから1年を経過していること。
国税庁長官は、登録国外事業者の氏名又は名称、住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地及び登録番号等について、インターネットを通じて登録後速やかに公表しなければならないこととされます。
登録国外事業者が、登録の取消しを求める届出書を納税地を所轄する税務署長を経由して国税庁長官に提出した場合には、届出書の提出があった日の属する課税期間(その届出書の提出が一定の日以後になされた場合には翌課税期間)の末日の翌日以後は、その登録は失効するものとされます。
登録を受けた日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間については、上記ハによる登録の取消しを求める届出書の提出が行われない限り、事業者免税点制度は適用されません。

適用期日 登録国外事業者制度に係る登録申請については、平成27年7月1日以後にできることとされます。


【5】所要の経過措置

(1) (事業者免税点制度に係る特例)
事業者の課税期間の基準期間の初日が平成27年10月1日前であるときは、その基準期間の初日からこの制度の見直しが行われていたものとして事業者免税点制度の規定が適用されます。
ただし、その基準期間の初日からこの制度の見直しが行われていたものとして課税売上高を計算することにつき困難な事情があるときは、平成27年4月1日から同年6月30日までの間においてこの制度の見直しが行われていたものとして計算した課税売上高に4を乗じて計算した金額によることが認められます。
(2) (特定課税仕入れに関する経過措置)
特定課税仕入れがある課税期間の課税売上割合が95%以上である場合には、当分の間、その課税期間において行ったその特定課税仕入れはなかったものとされます。


【6】その他

(1) 国外事業者を含む事業者免税点制度の適用上限については、資産の譲渡等を行う事業者に納税義務が課される課税売上高によって判断することとされ、特定課税仕入れの支払対価の額については適用上限の計算に含まないこととされます。
(2) 特定課税仕入れを行った者が単なる名義人であった場合に、実質的にその仕入れを行った者に消費税法の規定を適用する旨の規定が設けられます。
(3) 消費税の課税標準について、リバースチャージ方式の導入に伴う所要の措置が講じられます。
(4) 仕入控除税額の計算に関する規定について、
 特定課税仕入れにつき課されるべき消費税額を仕入控除税額の計算の対象とする旨の改正が行われます。
 簡易課税制度の適用を受ける課税期間について特定課税仕入れにつき課されるべき消費税額がある場合には、現行規定によりみなし仕入率を乗じて計算した課税仕入れ等の税額とその特定課税仕入れにつき課されるべき消費税額の合計額を課税仕入れ等の税額の合計額とする旨の改正が行われます。
 ただし、当分の間、その課税期間において行ったその特定課税仕入れはなかったものとされます。

適用期日 この改正は、【4】(2)を除き、平成27年10月1日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れ並びに保税地域から引き取られる課税貨物について適用されます。

 

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