目次 I-2


2 欠損金の繰越控除制度の縮減

 欠損金の繰越控除制度は、過去の事業年度において生じた欠損金をその事業年度の翌事業年度以降に繰り越し、所得金額から控除する制度です。

 欠損金の繰越控除制度等について、大法人(中小法人等以外の法人)の控除限度(現行:所得の80%)を、平成27年度に「所得の65%」、平成29年度に「所得の50%」に引き下げるなどの見直しが行われます。


【1】控除限度額の引下げ(大法人)

 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度及び連結欠損金の繰越控除制度における控除限度額について、次のとおり、段階的に引き下げられます。

  現 行 改正案
平27.4.1〜平29.3.31開始の
繰越控除をする事業年度
平29.4.1以後開始の
繰越控除をする事業年度
繰越限度額 80% 65% 50%


【2】中小法人等や再建中の法人などへの措置

 上記【1】に伴い、次の措置が講じられます。

(1) 中小法人等 中小法人等については、現行の控除限度額(所得金額又は連結所得金額)が存置されます(控除限度100%)。
(注)  上記の「中小法人等」とは、次の法人(連結納税の場合には、連結親法人)をいいます。
  (イ) 普通法人のうち、各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの又は資本若しくは出資を有しないもの(相互会社等、資本金の額等が5億円以上の法人等(大法人)の100%子法人及び100%グループ内の複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人を除きます。)
  (ロ) 公益法人等
  (ハ) 協同組合等
  (ニ) 人格のない社団等
(2) 再建中の法人 更生手続開始の決定があったこと、再生手続開始の決定があったこと等の事実が生じた法人(連結納税の場合には、連結親法人)については、その決定等の日から更生計画認可の決定、再生計画認可の決定等の日以後7年を経過する日までの期間内の日の属する各事業年度又は各連結事業年度については、控除限度額が所得金額又は連結所得金額とされます(控除限度100%)。
(注)  金融商品取引所への再上場等があった場合におけるその再上場された日等以後に終了する事業年度又は連結事業年度は対象外とされます。
(3) 新設法人 法人の設立(合併法人にあっては合併法人又は被合併法人のうちその設立が最も早いものの設立等)の日から同日以後7年を経過する日までの期間内の日の属する各事業年度又は各連結事業年度については、控除限度額が所得金額又は連結所得金額とされます(控除限度100%)。
(注1)  金融商品取引所に上場された場合等におけるその上場された日等以後に終了する事業年度又は連結事業年度は対象外とされます。
(注2)  対象となる法人から、資本金の額等が5億円以上の法人等(大法人)の100%子法人及び100%グループ内の複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人が除かれます。
(4) 特定目的会社など 特定目的会社、投資法人、特定目的信託に係る受託法人及び特定投資信託に係る受託法人で、支払配当等の損金算入制度の適用対象となるものについては、現行の控除限度額(所得金額)が存置されます(控除限度100)。
(注1)  上記(2)の措置に伴い、平成23年12月改正における更生手続開始の決定があったこと等の事実が生じた場合に係る経過措置については、(2)に統合する形で廃止されます。
(注2)  会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入制度については、現行どおりとされます。

適用期日 【2】の改正は、平成27年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。


【3】繰越期間の延長

 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越期間、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越期間及び連結欠損金の繰越期間が10年(現行9年)に延長されます。これに伴い、次の措置が講じられます。

青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度及び連結欠損金の繰越控除制度の適用に係る帳簿書類の保存要件について、その保存期間が10年(現行9年)に延長されます。
法人税の欠損金額に係る更正の期間制限が10年(現行9年)に延長されます。
法人税の欠損金額に係る更正の請求期間が10年(現行9年)に延長されます。

適用期日 【3】の改正は、平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金額について適用されます。

■欠損金の繰越控除制度の改正イメージ
  現 行 平成27年度 平成28年度 平成29年度
大法人 控除限度 80% 65% 65% 50%
繰越期間 9年 9年 9年 10年
中小法人等 控除限度 100% 100% 100% 100%
繰越期間 9年 9年 9年 10年
※平成29年度以降生じる欠損金について10年間、繰越可能

再建中の法人や新設法人については、7年間・100%控除できる制度が新たに導入されます

 

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