目次 II-3


3 その他の所得税制関連の改正

【1】生活に通常必要でない資産の範囲の拡大(ゴルフ会員権の損益通算不可)

 譲渡損失の他の所得との損益通算及び雑損控除を適用することができない「生活に通常必要でない資産」の範囲に、主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産以外の資産(ゴルフ会員権等)が加えられます。

 これにより、ゴルフ会員権やリゾート会員権などの売却損は、給与所得などと損益通算できなくなります。

適用期日 上記の改正は、平成26年4月1日以後に行う資産の譲渡等について適用されます。


【2】雑損控除の対象となる資産の損失金額の計算基礎の見直し

 雑損控除の対象となる資産の損失金額について、その資産の時価(損失が生じた時の直前におけるその資産の価額)を基礎として計算する方法のほか、その資産の取得価額に基づく価額(その資産の取得価額から減価償却費累積額相当額を控除した金額)を基礎として計算する方法が加えられます。

(注) 上記の「減価償却費累積額相当額」とは、その取得から譲渡までの間に業務の用に供されていた期間のない資産の場合には、その資産の耐用年数の1.5倍の年数に対応する旧定額法の償却率により求めた1年当たりの減価償却費相当額にその資産の取得から譲渡までの期間の年数を乗じて計算した金額をいいます。


【3】公的年金等に係る確定申告不要制度等の見直し

 公的年金等に係る確定申告不要制度等について、次の措置が講じられます。

(1) 公的年金等に係る確定申告不要制度について、源泉徴収の対象とならない公的年金等の支給を受ける者は同制度を適用できないこととされます。
(2) 2以上の居住者の控除対象配偶者又は扶養親族に該当する者をいずれの居住者の控除対象配偶者又は扶養親族に該当するかの判定の基礎となる申告書等の範囲に、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書が加えられます。

適用期日 上記(1)の改正は、平成27年分以後の所得税について適用し、上記(2)の改正は、平成26年分以後の所得税について適用されます。


【4】個人の債務免除益関係

 個人が、その有する債務について免除を受けたことにより生じる経済的な利益について、次の措置が講じられます。

(1)個人事業者の資産の評価損の必要経費算入

要件 事業を行う個人が、その有する債務につき債務処理に関する計画で一般に公表された債務処理を行うための手続に関する準則に基づく債務処理計画等の要件を満たすものに基づき債務免除を受け、その準則に定められた方法により減価償却資産及び繰延資産等の評定を行っていること。
措置(必要経費算入) それらの資産の評価損の額に相当する金額は、その免除を受けた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入されます。
(注) 必要経費に算入する金額は、この特例を適用しないで計算したその年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額が限度とされます。

(例)
帳簿価額  3,000万円
資産評定価額1,000万円
 評価損2,000万円(所得金額限度)を必要経費に算入

(2)個人の債務免除益の総収入金額への不算入

要件 個人がその有する債務につき、破産法の規定による免責許可の決定、再生計画認可の決定その他資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる事由により免除を受けること。
措置(総収入金額不算入) その免除により受ける経済的利益の額は、各種所得の計算上、総収入金額に算入されません。ただし、その経済的利益の額のうち、次に掲げる金額に相当する部分については、総収入金額に算入されます。
 免除を受けた年において、経済的な利益の額がないものとしてその債務を生じた業務に係る各種所得の金額を計算した場合にその各種所得の金額の計算上生じる損失の金額
 免除を受けた年において、経済的な利益の額を債務を生じた業務に係る各種所得の金額の計算上総収入金額に算入して計算した場合に、その生じる各種所得の金額から純損失の繰越控除により控除すべきこととなる金額


【5】その他

(1) 上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例等の対象となる特定公社債の範囲について、次の措置が講じられます。
 「社債のうちその発行の日前6か月以内に有価証券報告書等を内閣総理大臣に提出している法人が発行するもの」を、「社債のうちその発行の日前9か月以内(外国法人は12か月以内)に有価証券報告書等を内閣総理大臣に提出している法人が発行するもの」とされます。
 「平成27年12月31日以前に発行された公社債の範囲」から、その発行の際に同族会社に該当する会社が発行した社債が除外されます。
(注) 上記の改正は、平成28年1月1日以後に行う上場株式等の譲渡について適用されます。また、同族会社が平成27年12月31日以前に発行した特定公社債以外の公社債の利子でその同族会社の株主等が平成28年1月1日以後に支払を受けるものは、利子所得の20%源泉分離課税(所得税15%、住民税5%)の対象から除外されます。
(2) (ストックオプション課税の適正化)
発行法人から与えられた新株予約権等でその権利行使時に経済的な利益に対して課税されるものを、権利行使前にその新株予約権等の発行者に譲渡した場合には、その譲渡の対価の額を、事業所得に係る総収入金額、給与等の収入金額、退職手当等の収入金額、一時所得に係る総収入金額又は雑所得に係る総収入金額とみなして課税することとされます。
(注) 上記の改正は、平成26年4月1日以後に行う新株予約権等の譲渡について適用されます。
(3) 企業型確定拠出年金の拠出限度額について、次のとおり引き上げられます。
イ 他の企業年金がない場合 月額5.1万円→月額5.5万円
ロ 他の企業年金がある場合 月額2.55万円→月額2.75万円
(4) 所得税の予定納税制度について、次の措置が講じられます。
 災害等に係る国税通則法による納期限等の延長(以下「期限延長」といいます。)により、その年分の所得税につき納付すべき予定納税額の納期限がその年12月31日後となる場合には、その期限延長の対象となった予定納税額はないものとされます。
 災害等に係る期限延長により、その年6月15日において申告等の期限が延長されている場合には、同日までに税務署長が行うこととされているその年分の所得税に係る予定納税額等の通知は、期限延長により延長された第1期分の予定納税額の納期限(以下「延長後の納期限」といいます。)の1か月前までに行うものとされます。ただし、延長後の納期限がその年12月31日後となる場合には、当該通知は要しないものとされます。

 

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