目次 V-1


V.金融証券税制改正のポイント

1 金融証券優遇税制の延長等

(措法8の4、9の3、37の10、37の11の4、税制整備法第20条による改正後の平20改所法等附32、33、43、45、同法附26、27)

 金融証券税制については、個人金融資産を有効に活用し、我が国経済を活性化させるためにも、金融所得間の課税方式の均衡化と損益通算の範囲拡大を柱とする金融所得課税の一体化に向けた取組みを進める必要があります。

 改正前の上場株式等の配当・譲渡所得等に係る10%軽減税率は、景気回復に万全を期すため、平成25年12月31(改正前:平成23年12月31日)まで2年延長され、平成26年1月から20%本則税率とされました。これに伴い、非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(いわゆる「日本版ISA」)の導入時期については、平成26年1月からとされました。

 現在、店頭金融デリバティブ取引に係る所得については総合課税とされていますが、市場金融デリバティブ取引に係る所得と同様に、20%申告分離課税とした上で、両者の通算及び損失額の3年間の繰越控除が可能とされました。

 また、現行の総合課税の対象としている大口株主等が支払を受ける上場株式等に係る配当等の要件について、発行済株式等の総数等に占める保有割合が、現行の5%から3%に引き下げられました。

【参考】 今後の証券税制のスケジュール



(1)  上場株式等の配当等及び譲渡所得等に係る10%軽減税率(所得税7%、住民税3%)の適用期限が平成25年12月31日まで2年延長されました。

(2)  非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税(いわゆる「日本版ISA」)について、次の措置が講じられました。(措法9の8、37の14、税制整備法第21条による改正後の平22改所法等附52、61、64、同法附29、37)

施行日が2年延長され、平成26年1月1日からの適用とされます。
非課税口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に、次のものが追加されます。
(イ) 非課税口座を開設されている金融商品取引業者等が行う募集により取得した上場株式等
(ロ) 非課税口座内上場株式等について無償で割り当てられた上場新株予約権で、その割当ての際に非課税口座に受け入れられるもの
(ハ) 2以上の非課税口座で管理している同一銘柄の非課税口座内上場株式等について行われた株式分割等により取得した上場株式等

日本版ISAの概要  少額の上場株式等投資のための非課税措置の法制化
  ISA=Individual Savings Accounts
 1.非課税対象 非課税口座内の少額上場株式等の配当、譲渡益
 2.非課税投資額 毎年、新規投資額で100万円を上限(未使用枠は翌年以降繰越不可)
 3.非課税投資総額 300万円(100万円×3年間)
 4.保有期間 最長10年間
 5.途中売却 自由(ただし、売却部分の枠は再利用不可)
 6.口座開設数 年間1人1口座(毎年異なる金融機関に口座開設可)
 7.開設者 居住者等
 8.年齢制度 20歳以上
 9.導入時期 平成26年1月1日(20%本則税率化にあわせて導入)

(3)  先物取引に係る雑所得等の課税の特例及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の適用対象に、次に掲げる取引に係る雑所得等が加えられました。

商品先物取引法に規定する店頭商品デリバティブ取引(同法第2条第14項第1号から第5号までに掲げる取引に限ります。)の差金等決済
金融商品取引法に規定する店頭デリバティブ取引(同法第2条第22項第1号から第4号までに掲げる取引に限ります。)の差金等決済
金融商品取引法に規定する店頭カバードワラントのうち一定のものに係る差金等決済又は譲渡

 この改正により、いわゆるFX(外国為替証拠金取引)について、総合課税であった店頭取引FXは、市場取引FXと同様に申告分離課税となり、税制が一本化されることになりました。(措法41の14)

適用期日 この改正は、平成24年1月1日以後に行われる店頭商品デリバティブ取引、店頭デリバティブ取引又は店頭カバードワラントの差金等決済又は譲渡について適用されます。(税制整備法附43)

改正前
 
改正後  平成24.1〜
  金融先物(通貨・金利)
有価証券関連デリバティブ
商品先物
市場取引 申告分離
(雑所得)
店頭取引 総合
(雑所得)
  金融先物(通貨・金利)
有価証券関連デリバティブ
商品先物
市場取引
申告分離
(雑所得)

 
店頭取引
    (金融庁「平成23年度税制改正について」より)

(4)  次の特例の対象とならない大口株主等が支払を受ける配当等の要件について、その配当等の支払を受ける者が保有する株式等の発行済株式等の総数等に占める割合を100分の3以上(改正前:100分の5以上)に引き下げられました。(措法8の4、9の3、9の8)

(1) 上場株式等に係る配当所得の課税の特例
(2) 上場株式等の配当等に係る源泉徴収税率等の特例
(3) 非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得の非課税

適用期日 (1)及び(2)の特例については、平成23年10月1日以後に支払を受けるべき配当等について適用し、(3)の特例については、平成26年1月1日以後に支払を受けるべき配当等について適用されます。(税制整備法附26、27、29)

(5)  特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例等について、特定口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に、次のものが追加されました。

生命保険会社の相互会社から株式会社への組織変更に伴いその社員に割り当てられた上場株式等(その割当ての際に、社債、株式等の振替に関する法律に規定する特別口座で管理されることとなったものに限ります。)で、その特別口座から特定口座への受入れの際に、その特定口座を開設されている金融商品取引業者等の営業所 の長を通じてその者の住所地の所轄税務署長に対し特定口座及びその特別口座以外の口座において当該受入れに係る上場株式等と同一銘柄の株式を保有していない旨の申出書を提出して受け入れられるもの(措令25の10の2)
 (注) 上記イの上場株式等の特定口座への受入れは、一定の手続等の下に行うこととされます。(平成23年6月30日以後受入れ株式から適用)
株式無償割当により取得する上場株式等で、その割当ての際に特定口座に受け入れられるもの
新株予約権無償割当により取得する上場新株予約権で、その割当ての際に特定口座に受け入れられるもの
特定口座内保管上場株式等である新株予約権の行使により取得する上場株式等で、その行使による取得の際に特定口座に受け入れられるもの
新株予約権等(有利発行のものに限るものとし、ストックオプション税制の適用があるものを除きます。)の行使により取得した上場株式等で、その行使による取得の際に特定口座に受け入れられるもの
特定口座以外の口座で管理されていた被相続人、贈与者又は遺贈者(以下「被相続人等」といいます。)の上場株式等で、その口座が開設されていた金融商品取引業者等以外の金融商品取引業者等の営業所に当該被相続人等に係る相続人、受贈者又は受遺者が開設している特定口座に移管がされるもの

【参考】


◆特定口座の利便性向上に向けた所要の措置
【改正後の概要】
○特定口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に、次のものを追加する。
 ・ 「相互会社の株式会社化」に伴い発生した上場株式(特別口座で管理されているものに限る)
 ・ 「株式無償割当」により取得した上場株式(基準となる上場株式を一般口座に預け入れている場合)
 ・ 「新株予約権無償割当」により取得した上場新株予約権
 ・ 「特定口座内保管上場株式等である新株予約権」の行使により取得する上場株式
 ・ 「非適格ストックオプション」の権利行使により取得した上場株式
 ・ 「被相続人等の持株会等口座」から相続等により取得した上場株式等
 ○ 「特定口座」は、個人投資家の納税事務の負担を軽減する観点から設けられた制度
―平成22年6月末に時点で、約2,300万口座が開設
 ○ 特定口座に受け入れることができる上場株式等は、税法に限定列挙
(金融庁「平成23年度税制改正について」より)

(6)  金融機関が支払を受ける利子所得に対する源泉徴収の不適用の特例等について、資産の流動化に関する法律の改正が行われた場合には、対象となる利子等の範囲に、振替特定目的信託受益権のうち社債的受益権(重要事項以外に係る議決権を有しないものに限られます。)につき支払を受ける収益の分配が追加されます。

(7)  償還差益に対する発行時源泉徴収免除の特例の対象とされる短期公社債の範囲について、新たに財政法第4条の規定により発行される国債及び特例国債を対象とすることに伴い、対象となる国債を限定列挙する方式を改め、発行日から償還期限までの期間が1年以下であるすべての国債が対象とされました。(平成23年6月30日以後に発行される特定短期公社債について適用)

(8)  相続等に係る保険年金に対する源泉徴収及び支払調書制度について、次の措置が講じられました。

相続又は贈与等に係る保険年金(一定の基準に該当するものに限ります。以下「相続等保険年金」といいます。)に対する源泉徴収については、平成25年1月1日から廃止されました。
上記イの措置に併せて、次の措置が講じられました。
(イ) 相続等保険年金に対する支払調書制度については、平成25年1月1日以後の支払分について、提出省略基準を撤廃するとともに相続等に関する内容が記載事項に追加されました。また、最初の支払日が平成23年1月1日以後である相続等保険年金の初年分の支払調書については、相続等保険年金であることを明らかにする措置が講じられました。
(ロ) 国内に恒久的施設を有しない非居住者が支払を受ける相続等保険年金については、申告の対象とされました。

 

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