目次 II-3


3 総合特区制度・アジア拠点化推進のための税制の創設
―― 経済成長・雇用確保を実現するための政策的優遇税制

 激しい国際競争にさらされている我が国の企業立地環境を改善するため、税制面においても、地域や対象企業の特色に応じた対応が必要となっています。そこで、我が国全体の成長を牽引し、国際的に競争優位性を持ちうる大都市を対象とする「国際戦略総合特別区域」における成長産業や外資系企業等の集積を促進するため、税制上の支援措置が創設されました。併せて、全国で展開する「地域活性化総合特別区域」についても税制上の支援措置が講じられました。さらに、グローバル企業の「アジア地域統括拠点や研究開発拠点等」を呼び込むための税制上の支援措置が創設されました。


【1】総合特区制度の創設

 総合特区制度の創設に伴い、国際戦略総合特別区域に係る次に掲げる措置が講じられました。

(1)  設備投資等に係る優遇措置(特別償却・税額控除)(措法42の11、68の15)
 国際戦略総合特別区域内において、青色申告書を提出する一定の法人で地方公共団体の指定を受けたものが、認定国際戦略総合特別区域計画に記載された事業を行うために一定の規模以上の設備等の取得等をしてその事業の用に供した場合には、その取得価額の50%(建物等については、25%)の特別償却又は15%(建物等については、8%)の税額控除のいずれかの選択適用ができることとされます。ただし、税額控除額については当期の法人税額の20%を限度とし、控除限度超過額については1年間の繰越しができることとされました。
適用期日 この改正は、総合特別区域法の施行の日から平成26年3月31日までの間に指定を受けた法人のその間に取得等をする設備等について適用されます。(税制整備法附1十一、52)
(2)  設備投資等に係る優遇措置(5年間の所得控除)(措法60の2、68の63の2)
 国際戦略総合特別区域内において、青色申告書を提出する法人で認定を受けた地方公共団体の指定を受けた指定特定事業法人(当該区域内において設立された法人又は当該区域内に本店若しくは主たる事務所を有する法人のうち一定の規模以上の設備等の取得等をしたものに限ります。)が、専ら認定国際戦略総合特別区域計画に記載された規制等の特例措置の適用を受ける事業等を行う場合には、当該指定の日から5年間、当該事業に係る所得の金額の20%の所得控除の適用ができることとされました。
 なお、この措置の適用を受けることができる国際戦略総合特別区域の指定数は少数に限定するものとし、この措置の適用を受ける事業年度においては、上記(1)の国際戦略総合特別区域に係る特別償却又は税額控除は適用しないこととされました。
適用期日 この改正は、総合特別区域法の施行の日から平成26年3月31日までの間に指定を受けた法人のその指定を受けた日から5年を経過する日までの期間内に終了する各事業年度について適用されます。(税制整備法附1十一、54)


【2】 「アジア拠点化推進税制」の創設(所得税・法人税・個人住民税・法人住民税・事業税)(措法60の3、68の63の3)

 アジア新興国等の急速な経済成長に伴い、我が国の立地競争力は急速に低下し、日本に立地するグローバル企業の重要拠点が海外に流出し、このままでは我が国産業が空洞化するおそれがあります。そこで、我が国の持続的な経済成長を実現する観点から、グローバル企業の高付加価値拠点(統括事業及び研究開発事業の拠点)の国内立地を促進し、我が国産業の振興及び雇用の増大を通じて経済発展を図ることが必要であることから、ことしの税制改正で一定の認定を受けたグローバル企業に対し、課税の特例や特許料等の特例等の支援措置が講じられました。

 具体的には、アジア拠点化を推進するための制度の創設に伴い、青色申告書を提出する法人で特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法の研究開発事業計画又は統括事業計画の認定を受けた認定研究開発事業法人又は認定統括事業法人が、これらの事業計画の認定の日から5年間、その事業に係る所得の金額の20%の所得控除ができる措置が講じられました。

 なお、研究開発事業を行う法人がこの措置の適用を受ける事業年度においては、試験研究を行った場合の法人税額の特別控除又は【1】の制度は適用しないこととされました。

  「アジア拠点化推進税制」の創設  (所得税・法人税・個人住民税・法人住民税・事業税)
【改正概要】
(1)  グローバル企業の研究開発拠点又は地域統括拠点について、雇用創出や投資拡大に関する要件を満たす場合、認定から5年間、20%の所得控除を認める。
(2)  海外の親会社が認定企業の取締役等に付与したストックオプションに対する課税をすべてキャピタルゲイン課税(20%)の対象とする特例措置の導入

適用期日 この改正は、特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法の施行の日から平成26年3月31日までの間に認定を受けた法人のその認定を受けた日から5年を経過する日までの期間内に終了する各事業年度について適用されます。(税制整備法附1十、55)

【参考】 上記税制改正に伴い地方税においても、次の措置が講じられました。

(1)  上記総合特区制度の創設に伴い、上記【1】の法人税の特別償却や所得控除について、法人住民税及び法人事業税に反映する措置が講じられました。
(2)  アジア拠点化を推進するための制度の創設に伴い、上記【2】の法人税の所得控除について、法人住民税及び法人事業税に反映する措置が講じられました。

 

目次 次ページ