目次 VI-1


VI.金融証券・生命保険税制はここが変わる!


1 少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置の創設

 金融所得課税の一体化の取組の中で個人の株式市場への参加を促進する観点から、平成24年から実施される上場株式等に係る税率が20%本則税率化されます。これに伴い、下記の【2】に掲げる非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置が導入されます。

 この措置は国民に広く、株式等への投資促進に係るインセンティブを与えるため、小口の投資家を対象に、毎年100万円で3年間、総額300万円に達するまでは、上場株式等への投資から生ずる配当や譲渡益を非課税とするものです。


【1】非課税措置の概要

(1) 配当等 居住者等が、金融商品取引業者等の営業所に開設した非課税口座において管理している上場株式等(以下「非課税口座内上場株式等」といいます。)に係る配当等でその非課税口座の開設の日の属する年の1月1日から10年内に支払を受けるべきもの(当該金融商品取引業者等がその配当等の支払事務の取扱いをするものに限ります。)については、所得税及び個人住民税を課さないこととされます。
(2) 譲渡所得等 居住者等が、非課税口座の開設の日の属する年の1月1日から10年内にその非課税口座に係る非課税口座内上場株式等の金融商品取引業者等への売委託等による譲渡をした場合には、その譲渡による譲渡所得等については、所得税及び個人住民税を課さないこととされます。
 非課税口座内上場株式等の譲渡による損失金額は、所得税及び個人住民税に関する法令の規定の適用上、ないものとみなされます。


【2】非課税口座等

(1) 非課税口座の
意義
「非課税口座」とは、居住者等(その年1月1日において満20歳以上である者に限ります。)が、非課税措置の適用を受けるため、金融商品取引業者等の営業所に対し、その者の氏名、住所等を記載した非課税口座開設届出書に非課税口座開設確認書を添付して提出することにより平成24年から平成26年までの各年において設定された上場株式等の振替記載等に係る口座(1人につき1年1口座に限ります。)をいいます。
(2) 非課税投資額 非課税口座には、次のもののみを受け入れることができます。
その設定の日からその年12月31日までの間にその非課税口座を設定された金融商品取引業者等を通じて新たに取得した上場株式等(その非課税口座を設定した時からの取得対価の額の合計額が100万円を超えない範囲内のものに限ります。)
その上場株式等を発行した法人の合併等により取得する合併法人株式等
(3) 株式等の範囲 非課税口座内上場株式等の範囲は、上場株式等に係る10%軽減税率の対象となる上場株式等と同様です。


【3】非課税口座開設確認書の申請手続

(1) 申請書の提出 非課税口座について、非課税口座開設確認書の交付を受けようとする居住者等は、その者の氏名、住所等を記載した交付申請書にその者の平成23年1月1日における住所地を証する住民票の写し等を添付して、その者が最初に非課税口座を開設しようとする年の前年10月1日からその開設年の9月30日までの間に、金融商品取引業者等の営業所の長に対して提出しなければならないとされます。
(2) 申請書の送付 上記(1)の申請書の提出を受けた金融商品取引業者等の営業所の長は、その申請書に記載された事項をe−Tax等を利用する方法により、すみやかに上記(1)の金融商品取引業者等の営業所の所在地の所轄税務署長に送付しなければならないこととされます。
(3) 確認書の交付 上記(2)の申請書の記載事項の送付を受けた税務署長は、その申請書の提出をした者につき、その送付を受けた時以前に申請書の提出がないことを確認しなければならないものとし、その申請書の提出がないことの確認をした税務署長は、申請者の氏名、生年月日、基準日の住所等を記載した非課税口座開設確認書をその金融商品取引業者等の営業所を通じてその申請書を提出した者に交付しなければならないこととされます。


【4】非課税口座年間取引報告書(仮称)の税務署長への提出

 金融商品取引業者等は、その年中に非課税の適用を受けた非課税口座内にある上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の金額、非課税口座内上場株式等の残高等を記載した報告書を作成し、これを翌年1月31日までに、非課税口座が開設されていた金融商品取引業者等の営業所の所在地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされます。


【5】その他所要の措置

 その他所要の措置が講じられます。

制度の概要 少額の上場株式等投資のための非課税措置の法制化(日本版ISA)
       ISA=Individual Savings Accounts

1.非課税対象 非課税口座内の少額上場株式等の配当、譲渡益
2.非課税投資額 毎年、新規投資額で100万円を上限(未使用枠は翌年以降繰越不可)
3.非課税投資総額 300万円(100万円×3年間)
4.保有期間 最長10年間
5.途中売却 自由(ただし、売却部分の枠は再利用不可)
6.口座開設数 年間1人1口座(毎年異なる金融機関に口座開設可)
7.開設者 居住者等
8.年齢制度 20歳以上
9.導入時期 平成24年1月1日(20%本則税率化にあわせて導入)

(金融庁「平成22年度税制改正について」より)

 【参考】来年度以降の税制改正の方向
<金融商品間の損益通算の範囲の拡大>
 金融商品間の損益通算の範囲の拡充に向け、平成23年度改正において、公社債の利子及び譲渡所得に対する課税方式を申告分離課税とする方向で見直すことが検討されます。
  インカムゲイン キャピタルゲイン
上場株式・公募株式投信 配当所得(申告分離) 譲渡所得(申告分離)
債券・公社債投信・預金 利子所得(源泉分離) 非課税
先物取引(取引所取引) 雑所得(申告分離)
      は、現行、損益通算が認められている範囲

 

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