目次 V-1


V.消費税制はここが変わる!

――消費税の仕入控除税額の調整措置に係る適用の適正化――

 消費税の課税を適正化するために、調整対象固定資産の取得に係る仕入控除税額が過大であった場合、減額調整する措置の対象となるよう、次の見直しが行われます。これは、以前から、アパートなどを建設した非課税事業者が、課税事業者になることで、建物の建設資金に係る仕入税額の還付を受けようとする手法で、目に余る事例が多く出てきたことで問題視されるようになり、今回の改正となったものです。



1 事業者免税点制度の適用の見直し

 次の期間(簡易課税制度の適用を受ける課税期間を除きます。)中に、調整対象固定資産を取得した場合には、その取得があった課税期間を含む3年間は、引き続き事業者免税点制度が適用できないこととされます。

(1)  課税事業者を選択することにより、事業者免税点制度の適用を受けないこととした事業者の当該選択の強制適用期間(2年間)
(2)  資本金1,000万円以上の新設法人につき、事業者免税点制度を適用しないこととされる設立当初の期間(2年間)
(注1) 上記の改正は、(1)に該当する場合には平成22年4月1日以後に課税事業者選択届出書を提出した事業者であれば、同日以後開始する課税期間から適用し、(2)に該当する場合には同日以後設立された法人について適用されます。
(注2) 調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で100万円(税抜き)以上のものをいいます。


仕入控除税額の調整措置の回避事例について(検査院意見表示事項)

 【消費税の仕組み】
 ○課税事業者= 仕入に係る消費税額の控除(又は還付)可能
 ○免税事業者= 仕入に係る消費税額の控除(又は還付)不可
  ただし、予め届出を行えば、課税事業者となることが可能(課税選択)
    その後2年経てば、通常の免税事業者に戻ることも可能

 【検査院に指摘されたケース】
【検査院に指摘されたケース】
(内閣府「税制改正(要望にない項目等)」資料より)


現行の仕入控除税額の調整措置

 【制度の概要】
 ○ 取得時の課税売上割合が、以降3年間の平均課税売上割合と比較して著しく低下した場合、第3年度に取得時の過大な控除税額を減額調整
課税売上割合は、事業のため必要な資産取得後の事業形態の変化などにより大きく変動する場合があるため、取得時の課税売上割合のみで控除税額を確定することは不適当

(内閣府「税制改正(要望にない項目等)」資料より)


事業者免税点制度のあらまし

 「基準期間」(※)の課税売上高が1,000万円以下の場合、その課税期間については、消費税が免除されています。


 消費税の免税点制度は、小規模な事業者の事務負担や税務執行コストを軽減するために設けられている措置です。

※「基準期間」とは次の期間をいいます。

◎個人事業者の場合 原則としてその年の前々年
◎法人の場合 原則としてその事業年度の前々事業年度(前々事業年度が1年未満である場合は原則として1年相当に換算した金額により判定)

 なお、個人事業者の新規開業年とその翌年及び新たに設立された法人の第一期目と第二期目の基準期間は存在しないので、原則としてこれらの期間は免税事業者となります。ただし、法人の場合は、期首時点での資本又は出資の金額が1,000万円以上の場合、これらの期間の納税義務は免除されず、課税事業者となります。


ポ イ ン ト
免税事業者でも課税事業者を選択できる!
免税事業者には、消費税の納税義務がないとともに、消費税の還付を受ける権利もありません。例えば、建物を建てたり、機械を購入したりした場合や貸倒れが生じた場合などは課税事業者ですと消費税が還付される場合がありますが、免税事業者には、そのチャンスがありません。そのような場合、免税事業者が税務署へ届出(消費税課税事業者選択届出書※)を提出して課税事業者になることがあります。いったん、課税事業者を選択すると2年間は強制適用で免税事業者に戻ることはできませんが、それ以降は、基準期間の課税売上高が僅少なら免税事業者に戻ることもできます。
消費税課税事業者選択届出書※=課税事業者になろうとする年の前年末、新規開業のときは開業年の末日(法人の場合は、前事業年度末、新設のときはその事業年度末)までに提出しなければなりません。

 

目次 次ページ