目次 IV-2


2 移転価格税制の見直し

 移転価格税制については、OECDにおける移転価格ガイドライン見直しの議論の動向などを踏まえながら、関連者の判定基準の実質的判断や独立企業間価格の算定方式における「幅(レンジ)」の概念のあり方などについて検討がされています。独立企業間価格の算定方式の適用優先順位を柔軟化することや比較対象取引の候補となりうる取引が複数存在する場合等の選定方法をさらに明確化すること、シークレットコンパラブル(類似の取引を行う第三者から質問検査等により入手した比較対象取引についての情報)のあり方、執行体制を充実させて事前確認を迅速化させることなど、必要な方策が検討されています。

 また、適切に課税・徴収を確保する観点から、クロスボーダーで活動を行う者に対する課税の確保や適正性、国外資産等に関する情報の的確な把握についても、具体的な方策が検討されてきました。

 さらに、租税条約については、今後とも我が国経済の活性化や我が国課税権の適切な確保に資するよう、日本の経済構造及び国内法制、国際課税を巡る状況等を勘案しつつ、条約締結国のネットワークを迅速に拡充することが必要です。

 そこで、平成22年度改正では、国際取引を行う企業の予見可能性を確保し、事務負担に配慮しつつ、税務執行の透明化・円滑化の観点から、国外関連者との取引に係る課税の特例(いわゆる移転価格税制)について、次の見直しが行われます。

(1) 移転価格課税について、独立企業間価格の算定及び検証に当たり、国外関連者との間の取引価格の交渉過程等の検討を要する場合に特に留意すべき事項等が運用において明確にされます。
(2) 移転価格調査における納税者の協力が得られない場合の推定課税規定において提出又は提示を求めている書類について、その範囲が、次の区分に基づき、明確にされます。
国外関連取引の内容を記載した書類
国外関連取引について法人が算定した独立企業間価格に係る書類

 【参考】移転価格税制の概要(現行税制と改正案の内容)
国際課税制度(移転価格税制) 拡充・見直し
◇移転価格税制の概要(現行)   ◇改正内容
  【創設年度:S61年】
日本企業が、外国子会社との取引価格を操作して、租税回避を行うことを防止する制度。
例えば、日本からモノを海外子会社に売る場合、売却価格を低めに設定して、(税率が高い)日本側の利益を圧縮し、(税率が低い)外国子会社側での利益を多く計上することで、日本での課税逃れを図る場合がある。
このような場合、通常の取引価格(※)に引き直した所得に対して課税を行う制度。
独立の第三者であればその価格で取引したであろう価格:「独立企業間価格」
 
移転価格税制は、独立企業間価格の算定のために膨大な労力と時間を要し、企業にとっては重大な課税リスクを伴う制度。
対等出資等の国際合弁企業について、
  (1) 出資先の相手国政府の規制・指導がある場合や
  (2) 相手国側の同意なくしては価格決定できない場合
  などを念頭においた独立企業間価格の算定を適切に行う必要あり。
  課税の基礎となる価格の算定に当たり考慮すべき事項等の明確化
  あわせて、税務執行の透明化・円滑化の観点から、独立企業間価格算定に必要な文書の範囲の明確化


(経済産業省「平成22年度税制改正について」より)

 

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