目次 IV-1


IV.国際課税税制はここが変わる!


1 タックスヘイブン税制(外国子会社合算税制)等の見直し

 近年、経済取引のグローバル化の進展に伴い、外国関係会社との取引関係の操作や税負担の少ない国(タックス・ヘイブン国)を利用した租税回避行為の機会が高まっています。また、グロ−バル化が進む中、国境を超える取引が恒常的に行われるとともに、その取引も法人その他の多様な事業体の利用により複雑化しています。しかし、実際の課税や徴収の確保にあたっては、情報の把握の困難性や外国の主権により執行上の制約を受けるなど、税務執行が困難になる傾向が強まっています。

 一方で、税務執行に係るルールを一層明確化し、経済取引の実態により即したものとすることは、納税者側に過大な負担をかけず、正常な企業活動を阻害しないために重要です。

 このため、制度・運用の両面において租税回避を防止して我が国の適切な課税権を確保すると同時に、企業活動の活性化のため税務執行に係るルールを明確化・適正化する必要があります。

 そこで、平成22年度改正では、国外に進出する企業の事業形態の変化や諸外国における法人税等の負担水準の動向に対応しながら、租税回避行為を一層的確に防止する観点から、内国法人等の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例(いわゆるタックス・ヘイブン税制)等について、次の見直しが行われます。

(※タックス・ヘイブン=租税回避地)

(1) 特定外国子会社等に該当することとされる著しく低い租税負担割合の基準(いわゆるトリガー税率)が20%以下(現行25%以下)に引き下げられます。
また、トリガー税率の計算における非課税所得の範囲から除くこととされている配当等に、外国法人の所在地国の法令により、二重課税排除を目的としたものとして株式保有割合要件以外の要件により所在地国の課税標準に含まれないこととされる配当等が追加されます。
(2) 外国子会社合算税制の適用を受ける内国法人等の直接及び間接の外国関係会社株式等の保有割合要件が10%以上(現行5%以上)に引き上げられます。
(3) 特定外国子会社等の適用除外基準について、次の措置が講じられます。
事業基準に関し、適用除外とならない「株式等の保有を主たる事業として営む法人」の判定上、統括会社が保有する被統括会社の株式等については、「株式等」から除外されます。
非関連者基準の判定上、卸売業を主たる事業として営む統括会社が被統括会社との間で行う取引については、関連者取引に該当しないものとされます。
特定外国子会社等で所在地国基準又は非関連者基準を満たさないものが、事業基準、実体基準及び管理支配基準を満たす場合の適用対象金額の計算において、人件費の10%相当額を控除する措置が廃止されます。
(注1) 「統括会社」とは、次のすべての要件を満たす特定外国子会社等をいいます。
 内国法人等に係る特定外国子会社等で、その内国法人等により発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されていること
 二以上の被統括会社を有し、その被統括会社の事業を統括する業務として一定のものを行っていること
 所在地国において統括業務に係る固定施設及び統括業務を行うに必要な従業者(専ら統括業務に従事する者であって、その特定外国子会社等の役員を除きます。)を有すること
(注2) 「被統括会社」とは、次のすべての要件を満たす外国法人をいいます。
 統括会社が、発行済株式等の25%以上を直接に保有し、かつ、議決権の25%以上を直接に保有するその統括会社の関連者(非関連者基準における関連者であって、外国法人に限るものとし、内国法人等の同族関係者に係る関連者を除きます。)であること
 所在地国において、実体のある事業活動を行っていること
(注3) 内国法人等に係る特定外国子会社等が統括会社に該当する場合には、その特定外国子会社等が行う統括業務の内容及び被統括会社との資本関係図等を確定申告書に添付しなければならないこととされます。
(4) 〈特定外国子会社等に係る資産性所得合算課税制度の導入〉
特定外国子会社等のうち適用除外基準を満たす者であっても、次に掲げる所得(以下「資産性所得」といいます。)を有する場合には、その資産性所得について、内国法人等のその特定外国子会社等に対する株式等の保有割合に応じ、内国法人等の所得に合算して課税されます。
株式保有割合10%未満の株式等の配当等に係る所得又はその譲渡(取引所又は店頭における株式等の譲渡に限ります。)による所得
債券の利子に係る所得又はその譲渡(取引所又は店頭における債券の譲渡に限ります。)による所得
工業所有権及び著作権(出版権及び著作隣接権を含みます。)の提供による所得(特定外国子会社等により開発されたもの等から生ずる所得を除きます。)
船舶又は航空機の貸付けによる所得
ただし、特定外国子会社等の資産性所得の合計額がその特定外国子会社等の税引前所得の5%相当額以下である場合又は特定外国子会社等の資産性所得に係る収入金額の合計額が1,000万円以下である場合には、本措置は適用されないこととされます。
(注1) 資産性所得の金額は、その特定外国子会社等の課税対象金額が上限とされます。
(注2) 資産性所得に係る収入金額から直接経費(収支の関係が明らかなものに限ります。)が控除されます。ただし、株式等の配当等及び債券の利子については、当期の支払利息を按分した金額の控除が認められます。
(注3) 特定外国子会社等が行う事業(事業基準に掲げる事業が除かれます。)の性質上、基本的かつ重要で欠くことのできない業務から生ずる上記イ及びロの所得が除かれます。
(5) 内国法人等が外国法人から配当等を受ける場合には、その配当等の額のうち、内国法人等の配当等を受ける日を含む事業年度及びその事業年度開始の日前2年以内に開始した各事業年度における次のいずれか少ない金額に達するまでの金額は、益金の額に算入されないこととされます。
その外国法人が他の外国法人(合算対象とされた金額を有さない者が除かれます。)から受けた配当等の額のうち、その内国法人等がその外国法人を通じて間接に有する株式等に対応する部分の金額に相当する金額の合計額
その他の外国法人につき合算対象とされた金額のうち、その内国法人等がその外国法人を通じて間接に有する株式等に対応する部分の金額の合計額
(6) 特殊関係株主等である内国法人等に係る特定外国法人に係る所得の課税の特例について、上記(1)、(3)ハ、(4)及び(5)と同趣旨の改正が行われます。
(7) その他所要の措置が講じられます。

適用期日 これらの改正は、特定外国子会社等の平成22年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。ただし、上記(5)は、内国法人の同日以後に開始する事業年度において受ける外国法人からの配当等について適用されます。

 【タックスヘイブン税制の概要】
【タックスヘイブン税制の概要】
(経済産業省「平成22年度税制改正について」より)

トリガー税率=引き金になる税率

 【参考】タックスヘイブン税制の概要及び変更点
【参考】タックスヘイブン税制の概要及び変更点
(経済産業省「平成22年度税制改正について」より)

 

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