III-1 |
III.法人税制はここが変わる! |
我が国の国税と地方税を合わせた法人実効税率は、国際的にみると高く、国際競争力などの観点から税率引下げの必要性が指摘されるところです。しかし、法人所得課税の負担に社会保険料事業主負担をあわせてみると、国際的にも必ずしも高い水準ではないという見方もあります。 このところ法人課税の分野では、主に租税特別措置により特定の分野や活動に限られた財源を集中することで我が国経済を後押しする手法がとられてきました。しかし、諸外国をみれば、この間に課税ベースの拡大と併せた法人税率の引下げが進んできています。そこで、我が国でも、租税特別措置の抜本的な見直しなどを進め、これにより課税ベースが拡大した際には、成長戦略との整合性や企業の国際的な競争力の維持・向上、国際的な協調などを勘案しつつ、法人税率を見直していくこととされています。 このような方向性が示された上で、ことしの法人税税制は、グループ法人税制の整備や国際課税制度の強化、一人オーナー会社課税制度の廃止、租税特別措置の整理合理化などが行われます。 |
1 一人オーナー会社課税制度の廃止 |
特殊支配同族会社における業務主宰役員給与の損金不算入制度(いわゆる一人オーナー会社課税制度)が廃止されます。この制度は、特殊支配同族会社の業務主宰役員は自ら給与を決めることで税負担の調整を図ることが可能であるという点を踏まえ、そうした役員給与が法人段階で損金算入され、個人段階でも給与所得控除の対象となる「二重控除」の問題に対処するために設けられたものです。しかし、この制度については、二重控除を是正する手法として適当なのかどうかといった批判があります。 そこで、この制度は平成22年度税制改正で廃止されます。その上で、給与所得控除を含めた所得税のあり方について議論をしていく中で、個人事業主との課税の不均衡を是正し、「二重控除」の問題を解消するための抜本的措置を平成23年度税制改正で講じられます。
【改正前の一人オーナー会社課税制度の概要】 同族会社の業務を主宰する役員及びその同族関係者等が、発行済株式の総数の90%以上の数の株式を所有し、かつ、常務に従事する役員の過半数を占める場合には、その業務を主宰する役員に対して支給する役員給与のうち給与所得控除に相当する部分として計算される金額は、損金不算入とされます。 ただし、その同族会社の所得等の金額(所得金額と所得金額の計算上損金の額に算入されたその給与の額の合計額。「基準所得の金額」といいます。)の直前3年以内に開始する事業年度における平均額が年1,600万円以下である場合及びその平均額が年1,600万円超年3,000万円以下であり、かつ、その平均額に占めるオーナー給与の額の割合が50%以下である場合は、適用除外となります。
【創設から廃止まで】
|