目次 V-1


V.企業関連税制はこう変わる


1 人材投資促進税制の創設

 企業が支払う従業員研修費の一部を、法人税から控除することができる人材投資促進税制が平成17年度から導入されます。教育訓練費を過去2年間の平均額よりも増やした企業が対象で、増加額の25%を法人税から差し引けます。上限は法人税額の10%で、中小企業はさらに大きな減税が受けられます。

 この制度は、我が国の産業競争力の基盤である産業人材を育成・強化する観点から、人材投資の減少傾向を拡大に転じさせるとともに、企業における戦略的な人材育成への取組みを強力に後押しするため、人材育成に積極的に取り組む企業について、教育訓練費の一定割合を法人税額から控除するというものです。

 経済産業省によれば、すぐに利益につながらない中長期的な投資である教育訓練費を、戦略的に拡大させることは日本の重要課題であり、研修費用の給与総額に対する割合が欧米の2分の1、中国の5分の1に落ち込んでおり、政策として企業内人材育成を促進することが急務であり、しかも、団塊世代の定年到達や若者人口の急減が迫る中、企業の人材空洞化が懸念されています。こうした経営課題を踏まえ、企業が場当たり的な教育ではなく、経営戦略の一環として従業員教育をした場合には、減税をして支援をしようというものです。

(1)〔基本制度〕 青色申告書を提出する法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入される教育訓練費の額が、その法人の直前2年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された教育訓練費の平均額を超える場合には、3年間の時限措置として、その超える部分の金額の100分の25相当額の特別税額控除が認められます。ただし、当期の法人税額の100分の10相当額が限度とされます。


(2)〔中小企業者の特例〕 青色申告書を提出する中小企業者等については、上記(1)の基本制度の適用に代えて、各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額に対し、次の特別税額控除割合による特別税額控除が認められます。ただし、当期の法人税額の100分の10相当額が限度とされます。

 (イ)  教育訓練費増加割合(当期の教育訓練費の額からその直前2年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された教育訓練費の平均額を控除した金額のその平均額に対する割合)が100分の40以上の場合は、100分の20
 (ロ)  教育訓練費増加割合が100分の40未満の場合には、教育訓練費増加割合に0.5を乗じた割合


  ○ (1)の基本制度との選択が可能
  ○ 中小企業特例については、地方税(法人住民税)においても適用されます
(課税税率を法人税額控除後の額とします。)。

適用期日 この改正は、平成17年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます(3年間の時限措置)。


〈税額控除の対象となる教育訓練費の具体的例示〉
(1)講師・指導員等経費… 社外講師、指導員に支払う講師料、指導員料
(2)教材費………………… 研修用の教材、プログラムの購入料等
(3)外部施設使用料……… 研修を行うために使用する外部施設・設備の借上料、利用料
(4)研修参加費…………… 企業経営の観点から企業が従業員の教育訓練上必要なものとして指定した講座等の受講費用、参加費用
(5)研修委託費…………… 講師、教材等を含め研修全体を外部教育機関へ委託する場合の費用

改正

効果
長期減少傾向にある企業の人材投資額を回復・増大できる。
企業の生産性向上・経営革新を通じて、我が国産業全体の競争力が上昇できる。

設 例
(A) 平均教育訓練費(前2事業年度の教育訓練費の平均額)8,000万円の企業で当期教育訓練費が9,600万円の場合
〈大企業の場合〉
  9,600万円−8,000万円=1,600万円
  1,600万円×25%=400万円
  400万円の法人税控除額(ただし、法人税額の10%が限度)

〈中小企業の場合〉
  (9,600万円−8,000万円)÷8,000万=20%<40%
  20%×1/2=10%(税額控除率)≦20%
  9,600万円×10%=960万円
  960万円の法人税控除額(ただし、法人税額の10%が限度)

(B) 上記の企業で当期教育訓練費が1億2,000万円であった場合
〈大企業の場合〉
  1億2,000万円−8,000万円=4,000万円
  4,000万円×25%=1,000万円
  1,000万円の法人税控除額(ただし、法人税額の10%が限度)

〈中小企業の場合〉
  (1億2,000万円−8,000万円)÷8,000万円=50%≧40%
  ∴20%
  1億2,000万円×20%=2,400万円
  2,400万円の法人税控除額(ただし、法人税額の10%が限度)

 

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