目次 II-1


II.相続税制はこう変わる


1 特定事業用資産の課税価格の計算の特例の拡充

 平成14年度に創設された「特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例」のうち中小法人の自社株に係る相続税課税の軽減を目的とした「特定同族会社株式等」について一定の要件下、株式の価額を3億円を上限として相続税の課税価格を10%減額することが認められていますが、今回の改正案でその3億円の上限が10億円に引き上げられます。
 
発行済株式総数
3分の2以下の部分
  株式の価額の上限
  (現 行)   (改正案)
  3億円 10億円

特定同族会社株式等の10%減額要件(次の(1)〜(3)の要件をすべて満たすこと)
(1)発行済株式等の総額要件
その同族会社の発行済株式等の総額(相続税評価額)が20億円未満である
(2)同族関係者持株割合要件
同族関係者の持株割合が50%超である
(3)同族会社株式保有役員継続従事要件
被相続人の親族である相続人が引き続きその同族会社株式を有し、かつ、役員としてその会社の経営に従事している
(特例適用)
その同族会社の発行済株式等の総数の3分の2以下の部分〔10億円(現行3億円)を限度〕についてはその株式の相続税の課税価格を10%減額

適用期日  この改正は、平成16年1月1日以後に相続若しくは遺贈又は相続時精算課税に係る贈与により取得する財産に係る相続税について適用されます。

【参 考】  「特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例」は次の3種類があります。
(1) 小規模宅地の特例(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)
事業用の宅地等(400平方メートルまで80%減、その他200平方メートルまで50%減)
  居住用の宅地等(240平方メートルまで80%減、その他200平方メートルまで50%減)
(2) 特定同族会社株式等の特例(取引相場のない株式等の相続税の課税価格の減額措置)
特定の中小同族法人の株式の課税価格を10%減
(3)山林の特例(森林施業計画区域内の山林の相続税の課税価格の減額措置)
*森林施業計画に基づき施業されている立木又は土地等5%減

 相続時精算課税制度を選択した場合、(1)の小規模宅地の特例は適用できず、適用できるのは(2)特定同族会社株式等の特例の10%減額措置と(3)山林の特例の5%減額措置だけですが、その減額措置も贈与時ではなく、相続発生の際、相続財産に合算する段階で減額適用ができます。

 また(1)と(2)あるいは(2)と(3)の重複適用も可能となっています。


一口情報 特定市街化区域農地等の特定転用の納税猶予の特例の延長
 平成4年1月1日から三大都市圏の市街化区域内にある特例農地等に係る相続税の納税猶予の特例が廃止されたのに伴い、それまでに納税猶予の適用を受けている特定市街化区域農地等について賃貸住宅用地等への転用の特例が設けられ、その後何回か見直し等が行われましたが、今回の改正案で、その適用対象者等の見直しが行われた上、適用期限が3年延長されます。


 イ 適用対象者(相続開始時期)…平成3年1月1日〜同年12月31日
 ロ 転用時期………………………平成16年4月1日〜平成19年3月31日
 ハ 工事着年日…平成19年3月31日まで(税務署への申請は平成19年1月31日まで)

 

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