目次 〔平成14年度改正〕 II-2


2 ストック・オプション優遇税制の拡充

 最近、課税問題をめぐっての話題が多いストック・オプション税制は、ストック・オプションの権利行使時の課税が行われず、売却時に株式譲渡益課税が行われるという制度で、今年の改正で、そのストック・オプションの優遇税制の対象が拡大されました。まず、新株予約権の付与対象者が自社の役職員だけでなく、親会社が50%超の株式を保有する子会社・孫会社の役職員に広げられる他、権利行使で自社株式を取得した際に所得税・住民税の課税を繰り延べることができる年間権利行使価額の上限が現行の1,000万円から1,200万円に引き上げられるなどの改正が行われました。

 平成13年11月の商法改正(平成14年4月1日施行)を受け、ストック・オプション制度は名称を「新株予約権制度」と変更され、付与対象者の制限の徹廃や付与対象者枠の徹廃が行われました。したがって税制もこれに合せた形で改正が要望されていました。


(1) 付与対象者に子会社・孫会社の役職員を追加

 従来のストック・オプション税制では、上記のようにストック・オプションを自社の役職員に限定していますが、改正商法では、新株予約権を株主総会の付与決議を前提として社外の者にも付与できることになりました。これに伴い適用対象者の範囲に、新株予約権の付与決議のあった株式会社が発行済株式(議決権のあるものに限ります。)又は出資の総数の50%を超える数の株式(議決権のあるものに限るものとし、出資を含みます。)を直接又は間接に保有する関係にある法人の取締役又は使用人である個人(その付与決議のあった株式会社の大口株主及びその特別関係者を除きます。)等が加えられました。


(2) 権利行使価額の年間限度額が1,000万円から1,200万円へ

 その年における新株予約権の行使に係る権利行使価額の限度額が1,200万円(現行1,000万円)に引き上げられました。

ストック・オプション課税の概要

 ストック・オプションとは、会社が取締役・従業員に対して、将来の一定期間内にあらかじめ定めておいた価格で自社株を取得できる権利をいいます。これにより、会社の業績向上による株価の上昇が、取締役・従業員の利益に結びつくことから、志気を高めたり、有能な人材確保の役に立ちます。


 なお、この措置の適用を受けるには、以下の要件を満たさなければなりません。

(1) 商法の規定による株主総会の決議に基づいて取締役・使用人との間で締結された契約に基づき付与されたものであること
(2) 上場・店頭登録株式については10分の1を超え、未公開株式については3分の1を超える株式を有する大口株主は除外すること
(3) 付与決議の日から2年以内は権利の行使ができないこと
(4) 権利行使価額の年間の合計額が1,000万円を超えないこと
(5) 1株当たり権利行使価額が契約締結時の1株当たりの価額以上であること
(6) 権利行使により取得した株式の保管・管理が、証券会社等に委託等されていること


(3) 契約要件の追加

 新株予約権の付与決議に基づき、その株式会社とその取締役等との間に締結された契約の要件として、その新株予約権の行使をすることができる期間がその付与決議の日から10年以内とされていること及び新株予約権の譲渡ができないこととされている等が追加されました。

 なお、個人又は法人に対して有利発行の特別決議に基づき新株予約権の付与(無償によるものに限ります。)をした株式会社は、その個人又は法人からの新株予約権の行使(ストック・オプション税制の適用を受けるものを除きます。)があった場合には、その個人又は法人の各人別に、その者の氏名又は名称及び住所、新株予約権を行使した日、新株予約権の行使に係る株式の種類及び数量並びにその行使に係る権利行使価額その他の事項を記載した調書を、その新株予約権の行使をした日の属する年の翌年1月31日までに、その株式会社の所在地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

適用期日 これらの改正は、平成14年4月1日以後の新株予約権の有利発行の特別決議に基づいて締結する契約により与えられる新株予約権に係るものについて適用されます。


一口情報 レポ取引の非課税制度の創設
 銀行業・証券業・保険業を営む外国法人(合算課税制度上の特定外国子会社等、国内取引相手の過少資本税制上の国外支配株主等に該当する一定の者等を除きます。)、外国の中央銀行又は国際機関が、一括清算法の対象者である国内の指定金融機関又は日本銀行との間で、一括登録国債、外国の国債・政府機関債・地方債、国際機関債、外国のこれらの債券の発行体の保証債又は外国の一定の金融機関債を用いて行う一定の要件(取引期間6か月以内等)を満たす債券の買戻又は売戻条件付売買取引(「レポ取引」)で、平成14年4月1日から平成16年3月31日までの間に開始する取引により支払を受ける貸付金の利子について、本人確認手続等所要の規定を整備した上、所得税が課されないこととされ、源泉徴収が免除されます。


一口情報 金庫株の処分による譲渡益・譲渡損の金額
 自己株式(いわゆる「金庫株」)の処分に伴って生ずる譲渡益・譲渡損に相当する金額については、法人税の取扱い上、資本積立金額の増加・減少金額とされます。

 

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