目次 I-1


個人課税関係編

I.都市再生・住宅税制改正のポイント


1 住宅ローン控除の増改築対象範囲の拡大等

 平成14年中に居住する場合の現行の住宅ローン控除制度は、住宅の新築・購入をした者や増改築等をした者などに対し、毎年の年末時点のローン残高の一定割合を所得税額から控除するしくみで、年末ローン残高の1%が所得税額から控除され、ローン残高の上限は5,000万円、控除期間は最長で10年、控除額は最大で500万円、適用期間は平成15年12月末日居住分までとなっています。

 
入居日 平成15年12月31日までの居住開始
控除対象上限 5,000万円
控除期間 10年間
控除率 ローン残高の1%
所得制限 年間所得3,000万円以下
適用対象
 
中古の場合

居住用家屋+その敷地(土地)
築後25年以内(耐火建築物)
築後20年以内(非耐火建築物)
床面積制限 50平方メートル以上無制限

注意点 なお、平成16年1月1日〜平成16年12月31日までに居住の用に供した場合には次のとおりとなります。
(a)  が
最  高
3,000万円
2,000万円以下の場合→(a)×1%  (a)=住宅借入金等の年末残高の合計額
2,000万円超の場合→(a)×0.5%+10万円
(最高年25万円で最長6年間控除)


 住宅ローン控除の対象となる借入金は、住宅の取得だけでなく、増改築等のための借入金で、償還期間が10年以上のものも対象となります。

現行の控除対象となる増改築等の範囲
(1)  増築、改築、建築基準法上の大規模な修繕、大規模な模様替え
(2)  家屋の一室(居室、キッチン、浴室、トイレ、洗面所、納戸、玄関、廊下のいずれか)の床又は壁の全部について行う修繕又は模様替え
(3)  区分所有のマンションの場合で、区分所有する次のいずれかのものの過半について行う修繕又は模様替え
(イ) 主要構造部である床及び最下階の床又は主要構造部である階段
(ロ) 間仕切り壁の室内に面する部分
(ハ) 主要構造部である壁の室内に面する部分
 なお、これらの工事と併せて行う設備の取替えや取付けで、家屋と一体となって効用を果たすものも、対象となる増改築などの工事に含まれます。
(4) 家屋のうちのその者の区分所有する部分の一室(居室、キッチン、浴室、トイレ、洗面所、納戸、玄関、廊下)の床又は壁の全部について行う修繕又は模様替え

 今年の改正では上記の増改築等の適用範囲に、

改正案
 地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合する一定の修繕又は模様替え


が追加されました。

適用期日 この改正は、増改築等をした居住用家屋を平成14年4月1日以後に自己の居住の用に供する場合について適用されます。


参考 ●住宅ローン減税の比較 ―平成15年末日までの居住開始が断然有利!
  居住日 平成13年7月1日〜平成15年12月31日 平成16年1月1日〜平成16年12月31日
控除期間 10年間 6年間
最高控除額(最大) 500万円 150万円
控除対象ローン残高 5,000万円まで 3,000万円まで
控除率    
住宅ローン年末残高 全期間 全期間
1,000万円以下の部分 1% 1%
1,000万円超〜2,000万円以下〃
2,000万円超〜3,000万円以下〃 0.5%
3,000万円超〜5,000万円以下〃 なし
適用対象    
 ・対象物件
 ・中古の場合(耐火建築物)
     〃   (非耐火建築物)
居住用家屋+その敷地(土地)
築後25年以内
築後20年以内
居住用家屋+その敷地(土地)
築後25年以内
築後20年以内
床面積制限 50平方メートル以上無制限 50平方メートル以上無制限
譲渡損失3年間繰越控除
制度との併用
できる
所得要件 年3,000万円以下 年3,000万円以下


控除対象となる家屋等
(1) 新築家屋
イ. 自己の居住用であること
ロ. 自己の居住用部分の床面積が総床面積の2分の1以上であること
ハ. 家屋の総床面積が50平方メートル以上であること(上限はなし)
(2) 中古家屋
イ. (1)のイ〜ハのすべてを満たすこと
ロ. 建築後使用されたものであること
ハ. 耐火建築物の場合は取得の日以前25年以内に建築されたものであること
耐火建築物以外の場合は取得の日以前20年以内に建築されたものであること
(3) 増改築等
イ. 建築基準法上の大規模の修繕又は大規模の模様替え等であること(前掲参照
ロ. 増改築後の家屋の床面積が50平方メートル以上であること
ハ. 工事費用が100万円を超えること
ニ. 増改築後の家屋の床面積の2分の1以上が自己の居住用であること
ホ. 工事費用の額の2分の1以上が自己の居住用部分に係るものであること


■平成15年末まで居住分と平成16年中居住分とのローン控除額比較表
居住日 平成13年7月1日〜平成15年12月31日まで 平成16年1月1日〜平成16年12月31日まで
当初借入金額 1,000万円
(1%)
2,000万円
(1%)
3,000万円
(1%)
1,000万円
(1%)
2,000万円
(1%)
3,000万円
(0.5%+10万円)

















1年目 979万円
97,900円
1,958万円
195,800円
2,937万円
293,700円
979万円
97,900円
1,958万円
195,800円
2,937万円
246,850円
2年目 957万円
95,700円
1,915万円
191,500円
2,872万円
287,200円
957万円
95,700円
1,915万円
191,500円
2,872万円
243,600円
3年目 935万円
93,500円
1,870万円
187,000円
2,806万円
280,600円
935万円
93,500円
1,870万円
187,000円
2,806万円
240,300円
4年目 912万円
91,200円
1,825万円
182,500円
2,737万円
273,700円
912万円
91,200円
1,825万円
182,500円
2,737万円
236,850円
5年目 889万円
88,900円
1,778万円
177,800円
2,667万円
266,700円
889万円
88,900円
1,778万円
177,800円
2,667万円
233,350円
6年目 864万円
86,400円
1,729万円
172,900円
2,594万円
259,400円
864万円
86,400円
1,729万円
172,900円
2,594万円
229,700円
7年目 839万円
83,900円
1,679万円
167,900円
2,519万円
251,900円
8年目 814万円
81,400円
1,628万円
162,800円
2,442万円
244,200円
9年目 787万円
78,700円
1,574万円
157,400円
2,362万円
236,200円
10年目 760万円
76,000円
1,520万円
152,000円
2,280万円
228,000円
控除限度額合計 873,600円 1,747,600円 2,621,600円 553,600円 1,107,500円 1,430,650円

注意点  上表は夫婦と子供2人の標準世帯で年収700万円以上、所得控除額200万円の場合について、借入金の利率を年3%(固定金利)、償還期間30年として計算しています。
 このシミュレーションでは、平成15年12月31日までに居住の用に供した場合の方が、借入金1,000万円の場合で320,000円、2,000万円の場合で640,100円、3,000万円の場合で1,190,950円控除額が多くなります。平成15年末までに居住の用に供するためには本年(平成14年)中に、しっかりと計画を立てる必要があります。


参考
住宅ローン減税の変遷
参考 住宅ローン減税の変遷


対象となる借入金
 住宅ローン控除の対象となる借入金は、住宅の取得又は増改築等、及び住宅とともに取得をする土地等でその住宅の敷地の用に供されるものの取得のための借入金等で、償還(又は賦払)の期間が10年以上のものに限られます。
 ただし、次のものは対象とはなりません。
 勤務先などからの融資や代金債務で利息が年1%未満のもの
 勤務先から利子補給金の支払いを受けているため、自らが実質的に負担する借入金や代金債務の利息が年1%未満となるもの


阪神・淡路大震災に係る再建住宅等の住宅ローン控除制度の期限延長
 阪神・淡路大震災で自宅に被害を受け居住できなくなった人が住宅の再取得をした場合には、入居した年から6年間すべて、次の表で控除額を計算することができます(平成11年改正後の新制度の方が有利な場合は、そちらを選択することもできます。)。この制度の適用期限が平成16年12月31日居住分まで3年延長されました。



一口情報 山林をめぐる相続税関係の改正
 山林に関する相続税について、次の措置が講じられました。
(1)  個人が相続又は遺贈により取得した山林(立木及び林地)のうち被相続人が森林施業計画を作成しており、かつ、相続人が引き続き森林施業計画に基づく施業を継続していた場合の当該森林施業計画が作成されている区域内に存する山林については、相続税の課税上、その課税価格が5%減額されました。
 なお、この特例を選択した場合には、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例等の適用が停止されます。
(注) 上記の改正は、平成14年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されます。
(2)  計画伐採に係る相続税の延納等の特例について、その適用要件である森林施業計画に係る立木の価額の課税相続財産の価額に占める割合が20%以上(現行30%以上)に引き下げられるとともに、利子税の割合が年0.6%[年1.2%](現行 年1.6%[年3.0%])に引き下げられました。
(注1)  上記の改正は、平成14年4月1日以後の期間に対応する利子税について適用されます。
(注2) 利子税の割合の本書きは、利子税の割合の特例措置の適用後の利子税の割合(公定歩合が年0.1%の場合)であり、[  ]書きは、利子税の割合の特例措置の適用前の利子税の割合です。

 

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