目次 はじめに


は じ め に

 日本経済は、デフレの加速や、失業率の悪化等もあり、未だに先行きの見通しが立たない状況です。さらに、昨年9月のアメリカでの同時多発テロの影響で、一層、世界的にも景気の不透明感が増しつつあります。

 このようななか、平成14年度の税制改正が行われました。マクロ的には自然増収は期待できず、しかも新たな増税は行わないとの制約の下、税制面からの構造改革への貢献や景気刺激効果は極めて限られた役割しか担うことができませんが、今年から新たに内容・ボリュームとも日本の税制史上際立ち、かつ、国際的にも遜色のない連結納税制度が導入されることとなりました。

 株式交換制度や企業組織再編成と相次いだ一連の改正の集大成ともいえる連結納税制度の導入により、企業の活性化、中小企業に対する生産性の向上、事業承継の円滑化などの税制支援を行うことが可能になります。

 また、中小企業を取り巻く厳しい経済環境も踏まえ、同族会社の留保金課税の軽減、交際費の定額控除限度額の引上げ等が実施される他、金融・証券税制では、個人投資家の証券市場への積極的参加を促す観点から株式譲渡益課税について、申告分離課税への一本化、税率の引下げ、あるいは上場株式等の譲渡に係る申告不要の特例制度が新設されます。さらに経済活性化のために老人等マル優制度にもメスが入れられました。

 土地・住宅税制については、住宅ローン控除の増改築等の範囲の見直しや一定の中高層ビルの取得時にかかる登録免許税の税率軽減等が行われました。

 相続税に関しては、中小企業者に配慮した円滑な事業承継を視野に入れた当面の措置として取引相場のない株式評価の減額特例制度が設けられました。

 そのほか、種々の施策が講じられましたが、今年の税制改正は連結納税のような大きなテーマの改正がある一方で、きめ細かい改正も相当量行われます。そこでここでは、これらの重要事項を図解や計算例を適宜織り込みながら、改正の要点と実務上の留意事項をわかりやすく解説しました。

 

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