目次 II-1


II.相続税制はこう変わる


1 取引相場のない株式の評価方法の変更

−類似業種比準方式による評価方法の見直しなど−

 取引相場のない株式の評価方法の改善合理化として次の改正が行われ、平成12年1月1日以後の相続又は贈与について適用される予定です。

(1)  類似業種比準方式による評価方法について、より収益性を加味する方法とするとともに、斟酌率(圧縮率)の見直しが行われます。

(2)  小会社の規模基準のうち従業員基準の見直しが行われます。

(3)  類似業種比準方式の併用を認めていない、いわゆる二要素ゼロの会社の株式の評価について、類似業種比準方式の併用が認められます。


(1) 類似業種比準方式による評価方法の変更

 大会社の株式は、上場会社の評価とのバランスから原則として、類似業種比準方式により評価することとされ、中会社の株式は、類似業種比準方式と純資産価額方式との併用方式、小会社の株式は、個人企業者とのバランスを考慮し原則として純資産価額方式で評価することとされています。このうち、類似業種比準方式は、次の算式で計算されますが、従来は、中会社、小会社の評価を行う際の斟酌率は全て一律0.7を乗じて計算されていましたが、今回の改正案では、小会社が0.5、中会社が0.6、大会社が0.7になります。

 また利益比準値は3倍に加味され、比準値の分母の数値も3から5となります。


類似業種比準株価(A)… 課税時期の属する月以前3か月間の各月の類似業種の株価と、前年1年間の平均株価のうち最も低いもの
配当比準値… 評価会社の直前期末(直前期末以前2年間の平均)における1株50円当たりの配当金額÷課税時期の属する年の類似業種の1株50円当たりの配当金額
利益比準値… 評価会社の直前期末以前1年間(又は2年間の平均との低い方)における1株50円当たりの年利益金額÷課税時期の属する年の類似業種の1株50円当たりの年利益金額
純資産比準値… 評価会社の直前期末における1株50円当たりの純資産価額(帳簿価額)÷課税時期の属する年の類似業種の1株50円当たりの純資産価額(帳簿価額)


取引相場のない株式の原則的評価方式
斟酌率
取引相場のない株式の原則的評価方式 現 行 改正案
区 分 計 算 方 法 類似業種比準
方式のウエイト
大会社
・類似業種比準価額
・純資産価額
いずれか
低い価額
100%
中会社
{類似業種比準価額(※)×L+
純資産価額×(1−L)}
L=大 90%
L=中 75%
L=小 60%
小会社
{類似業種比準価額(※)
×0.5+純資産価額×0.5}
いずれか
低い価額
純資産価額
50%
一律
0.7
0.7
0.6
0.5
(注) 上表中の※の部分の類似業種比準価額は純資産価額の方が低いときは純資産価額となります。


 計算例
※1株当たりの資本金の額は50円
1  大会社(会社区分) (注) 課税時期の属する類似業種の1株当たりの配当金額、純資産価額については、3と5の額と同じとし、同年利益金額は25円とする。(単位は円)
2  類似業種の株価 500円
3  評価会社の1株当たりの配当金額 5円
4  評価会社の1株当たりの年利益金額 35円
5  評価会社の1株当たりの純資産価額  250円
〔現 行〕     〔改正案〕


(2) 小会社の従業員数基準の見直し

 「小会社」となる従業員数基準が、今回の改正案で「10人以下」から「5人以下」に引き下げられます。これに伴い小会社の一部が中会社の小に移行します。

 A=卸売業 B=小売・サービス業 C=卸売業、小売・サービス業以外の業種


(注) 総資産価額と従業員のいずれか低い方の区分と取引金額の区分とのいずれか高い方を選ぶ


(3) 2要素ゼロの会社は類似業種比準方式の併用OK!

 類似業種比準方式の計算の基となる評価会社の直前期末を基準として判定した「1株当たりの配当金額」、「1株当たりの年利益金額」及び「1株当たりの純資産価額」のそれぞれの金額のうち、いずれか2要素以上が0であり、かつ、直前々末を基準として判定した場合においてもいずれか2要素以上が0である会社の株式評価については純資産価額方式のみしか適用できないこととされていましたが、今回の改正案では「2要素ゼロ」の会社についても類似業種比準方式と純資産価額方式との併用(併用割合は25%)が認められることになります。ただし、3要素ゼロとなる会社は従来どおり純資産価額方式のみしか適用できません。

現 行 改正案
いわゆる
2要素ゼロ
の評価会社
  純資産価額
方式のみ
類似業種比準価額×0.25+
純資産価額×0.75
いずれか
低い価額
純資産価額


 計算例
※1株当たりの資本金の額は50円
1  中会社の中(会社区分) (注) 評価会社の配当金額と年利益金額は3期連続0とする。また、課税時期の属する類似業種の1株当たりの配当金額・年利益金額・純資産価額は前掲の例と同じとする。(単位は円)
2  類似業種の株価 500円
3  評価会社の1株当たりの配当金額 0円
4  評価会社の1株当たりの年利益金額 0円
5  評価会社の1株当たりの純資産価額 250円
6  1株当たりの純資産価額(相続税評価額) 700円
〔現 行〕     〔改正案〕
1株当たりの純資産価額   700円
(相続税評価額)

 

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