目次 IV-2

 
2 取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度の創設

 事業承継税制の抜本見直しについては、中小企業の経営の承継の円滑化に関する法律(仮称)の制定を踏まえ、平成21年度税制改正において、以下を骨子とする事業の後継者を対象とした「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」が創設されます。

適用期日 本制度は中小企業の経営の承継の円滑化に関する法律(仮称)施行日(平成20年10月予定)以後の相続等に遡って適用されます。


[1]自社株に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税猶予制度

 事業承継相続人が、非上場会社を経営していた被相続人から相続等によりその会社の株式等を取得しその会社を経営していく場合には、その事業承継相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した議決権株式等(相続等の結果、その会社の発行済議決権株式の総数等の3分の2に達するまでの部分)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。

(注1)  「事業承継相続人」とは、中小企業の経営の承継の円滑化に関する法律(仮称)における経済産業大臣の認定を受けた一定の中小企業の発行済株式等について、同族関係者と合わせその過半数を保有し、かつ、その同族関係者の中で筆頭株主である後継者をいいます。

(注2)  会社を経営していた被相続人は、その会社の発行済株式等について、同族関係者と合わせその過半数を保有し、かつ、その同族関係者(事業承継相続人を除く。)の中で筆頭株主であったことを要します。


[2]その他の事業承継税制の改正事項

(1) 納税猶予の対象となる株式等のみを相続するとした場合の相続税額から、その株式等の金額の20%に相当する金額の株式等のみを相続するとした場合の相続税額を控除した額が猶予税額とされます。
(2) その事業承継相続人が納税猶予の対象となった株式等を死亡の時まで保有し続けた場合など一定の場合には、猶予税額が免除されます。
(3) その事業承継相続人が、相続税の法定申告期限から5年の間に、代表者でなくなる等、中小企業の経営の承継の円滑化に関する法律(仮称)に基づき経済産業大臣の認定が取り消された場合等には、その時点で、猶予税額の全額を納付します。
(4) 上記(3)の期間経過後において、納税猶予の対象となった株式等を譲渡等した場合には、その時点で、納税猶予の対象となった株式の総数等に対する譲渡株式の総数等の割合に応じた猶予税額を納付します。
(5) 上記(3)又は(4)により、猶予税額の全額又は一部を納付する場合には、その納付税額について相続税の法定申告期限からの利子税も併せて納付します。
(6) この特例の適用を受けるためには、原則として、納税猶予の対象となった株式等のすべてを担保に供しなければなりません。
(7) 個人資産の管理等を行う法人の利用等による租税回避行為を防止する措置が講じられます。
(8) 中小企業の経営の承継の円滑化に関する法律(仮称)の施行日以後に開始した相続等から適用を可能とする措置その他所要の措置が講じられます。
(9) 現行の特定同族会社株式等に係る相続税の課税価格の計算の特例は、所要の経過措置が講じられたうえで廃止されます。


◆中小企業事業承継税制の抜本拡充(相続税、贈与税)◆

中小企業事業承継税制の抜本拡充

事業承継の際の障害の一つである相続税負担の問題を根本的に解決するため、非上場株式等に係る相続税の軽減措置について、現行の10%減額から80%納税猶予に大幅に拡充するとともに、対象を中小企業全般に拡大されます。なお、本制度は、平成21年度改正で創設し、経営承継円滑化法(仮称)の施行の日(平成20年10月予定)以降の相続に遡って適用されます。
事業承継税制の技本拡充は、単に事業承継の円滑化を実現するのみならず、事業継続要件の設定により、真の意味で地域の雇用確保、更には経済活力の維持に向けた特効薬となります。

改正案の概要



参 考 「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」の概要



改 正 の
ね ら い
1.  中小企業においては、その大株主が代表者として経営に従事し、個人資産を会社の事業の用や担保に供していることが多くあります。このような中、経営者に係る相続の発生は、単に家庭内の私的問題に留まらず、会社の事業の継続・発展に大きな影響を与えることができます。
2.  経営者の相続財産の多くは株式等の事業用資産。換金性の乏しい非上場株式等に係る相続税負担は、結果として、会社の経営の不安定化を招きかねません。
3.  今回の事業承継税制の抜本拡充により、中小企業の事業の継続・発展に際しての障害を除去することが可能となり、地域の雇用確保、経済活力の維持が実現できます。
(経済産業省「平成20年度税制改正について」より)

 

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