目次 I-5-1


1 信託法の改正による新たな類型の信託への対応

(1) 受益証券発行信託

[1] 特定受益証券発行信託の信託財産に帰せられる収入及び支出 受託者段階で課税せず、受益者が受ける収益の分配について所得税又は法人税が課税されます。
特定受益証券発行信託とは、受益証券発行信託(の(1)に該当するものを除く。)のうち次の条件を満たすものをいいます。
受託者が税務署長の承認を受けた法人であること。
信託に係る未分配利益の額が信託の元本総額の1,000分の25相当額以下であること。
各計算期間が1年以下であること。
[2] 受益証券発行信託の収益の分配等



個人受益者が受ける収益の分配 配当所得として課税されます。
受益証券の譲渡による所得 株式等に係る譲渡所得等として課税されます。
特定受益証券発行信託の収益の分配 配当控除に関する規定の適用はありません。




特定受益証券発行信託の法人受益者が受ける収益の分配 受取配当等の益金不算入に関する規定の適用はありません。
受益証券発行信託の収益の分配については20%の税率により源泉徴収が行われます。
[3] 特定受益証券発行信託の信託財産につき納付した所得税(外国所得税を含む。)の額 その収益の分配に係る源泉徴収税額から控除されます。
[4] 特定受益証券発行信託以外の受益証券発行信託 その受託者に対し、信託財産から生ずる所得について、当該受託者の固有財産から生ずる所得とは区別して法人税が課税されます。
[5] その他 受益証券発行信託の収益の分配及び受益証券の譲渡対価について受益者の告知制度及び支払調書制度の整備が行われます。
受益証券発行信託の受益証券が印紙税の課税対象に加えられます。


(2) 受益者等の存在しない信託

[1] 受益者等の存在しない信託(遺贈により設定された目的信託、委託者の地位を有する者のいない信託で受益者が特定されていないもの等) その受託者に対し、信託財産から生ずる所得について、当該受託者の固有財産から生ずる所得とは区別して法人税が課税されます。この場合、信託の設定時に、受託者に対しその信託財産の価額に相当する金額について受贈益課税が行われます。
[2] 受益者等の存在しない信託を設定した場合
委託者
みなし譲渡課税又は寄附金課税が行われます。
受託者
信託財産の価額に相当する金額について受贈益課税が行われます。
[3] 受益者等の存在しない信託に受益者等が存することとなった場合 当該受益者等の受益権の取得による受贈益について、所得税又は法人税は課税されません。
[4] 受益者等の存在しない信託が終了した場合 残余財産を取得した帰属権利者に対して所得税又は法人税が課税されます。
[5] 受益者等の存在しない信託を利用した相続税
・贈与税の租税回避
信託により受託者に適用される法人税率と相続等により適用される相続税率等の差を利用した租税回避 その受託者に相続税等が課税(法人税等は控除)されます。
受益者等が特定した時に、世代飛ばしとなる場合 その受益者等に贈与税が課税されます。
[6] 公益信託 現行と同様の取扱いが維持されます。(注)

(注)  個人が認定特定公益信託に金銭を拠出(出捐)した場合には、寄附金控除の対象になり、相続した財産の金銭を認定特定公益信託に拠出した場合には、相続税の負担が不当に減少する場合を除き、相続税の課税価格に算入されません。また、法人が特定公益信託に金銭を拠出した場合には、一般寄附金として一定限度額まで損金算入の対象となり、認定特定公益信託に金銭を拠出した場合には、一般寄附金と同額まで別枠で損金算入の対象なります。さらに、公益信託の信託財産の運用収益については、所得税は課されません。


(3) 受益者連続型信託等

 信託行為に、一定の場合に受益権が順次移転する定めのある信託、受益者指定権等を有する者の定めのある信託、その他これらの信託に類似する信託については、次のとおり課税されます。

[1] 設定時において受益者等に対して、委託者から受益権を遺贈又は贈与により取得したものとみなして相続税、贈与税又は所得税が課税されます。
[2] 次の受益者等以降の者に対しては、その直前の受益者等から遺贈又は贈与により受益権を取得したものと、その直前の受益者等は受益権を遺贈又は贈与したものと、それぞれみなして相続税、贈与税又は所得税が課税されます。


適用期日  上記(1)及び(2)の改正は、原則として、新信託法の適用を受ける信託について適用し、上記(3)の改正は、原則として、新信託法の施行の日以後の受益権の移転等について適用されます。

 

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