目次 I-5


 五 改正信託法に係る税制の改正

 わが国では、信託法において、信託とは、自分(委託者)の信頼できる人(受託者)に財産を引き渡し、一定の目的(信託目的)に従い、ある人(受益者)のために、受託者がその財産(信託財産)管理・処分する制度として認められています。現在、信託の機能を利用した主な商品として、次のようなものがあります。

  信 託 商 品 等
個人向け 金銭信託・貸付信託、投資信託、遺言関連業務、不動産の信託・不動産業務
法人向け 年金信託、財産形成信託、資産流動化の信託(金銭債権の信託、不動産の信託)、証券信託(特定金銭信託等)、有価証券の信託、証券代行業務、不動産の信託・不動産業務
公益・福祉 公益信託、特定贈与信託
(社団法人信託協会HP より作成)

 第165回臨時国会において、改正信託法が平成18年12月8日に成立し、同年12月15日に公布されました。84年ぶりの抜本的改正です。公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内で施行されますが、自己信託に関する規定は、信託法の施行の1年後から施行されることになっています。

 改正信託法によると、信託の併合・分割の制度が創設された他、次のような新たな類型信託が創設されました。

受益証券発行信託 受益権を表示する有価証券を発行することができる信託です。受益権の有価証券化が認められます。
限定責任信託 受託者の履行責任の範囲が信託財産に限定される信託です。限定責任信託でない場合は、受託者の固有の財産も責任財産となります。
自己信託 委託者が自ら受託者となる信託をいいます。
目的信託 受益者の定めのない信託で、信託の目的のみを有する信託で、改正前は、公的信託を除いて認められていませんでした。

 これらの信託法の改正を受けて、信託関連税制の大幅な整備が講じられます。現行の受益者課税(パススルー課税)を維持しつつ、租税回避的な行為を防止し、その他の所要の整備等を行うことで、法改正後の信託の健全な発展による我が国経済の活性化が図られることになります。

改正の効果  この改正により、資金調達の円滑化、創業の促進等企業活動の選択肢が拡大されることになります。


(1) 委託者から受託者へ信託財産が移転 
(2) 受益者は受益権を取得
(3) 受託者は信託契約に基づき、信託財産の管理・処分等を行う(事業活動)
(4) (3)の活動から生じた利益は受益者に帰属
(経済産業省・平成18年12月「平成19年度税制改正について」より)


【現行の概要】

原則(いわゆる「本文信託」) 受益者が特定している場合 受益者に課税されます。
受益者が特定していない場合
又は存在していない場合
委託者に課税されます。
特例(いわゆる「ただし書き信託」) 合同運用信託
証券投資信託等
分配時に受益者に課税されます。
特定信託 原則 信託財産から生ずる所得について、受益者の固有財産から生ずる所得とは区分して法人税が課税されます。
例外 一定の要件を満たす場合には、配当の損金算入が認められます(ペイスルー課税)。
受託者に課税する信託は「特定信託」。配当を損金算入できる「ペイスルー」という制度もあるが、例外的な措置。


【改正案の概要】

  現行の受益者課税(パススルー課税)が原則として維持されつつ、新たな信託の類型に対応して次のように改正されます。また、不当に法人税を回避するような場合には、受託者段階で課税を行う等の措置が講じられます。


 

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