目次 I-1


I.国・地方を通ずる個人所得課税はここが変わる


1 国から地方への3兆円の税源移譲

――住民税率は一律10%に、所得税率は5%〜40%の6段階に――

 真の地方分権を推進し、地方自治の確立を図るための「三位一体の改革」については、「平成17年度の税制改正大綱」において、「三位一体改革の一環として、平成18年度税制改正においては、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施」することが明らかとなり、平成17年11月末、政府・与党の間で4兆円を上回る国庫補助負担金の改革と3兆円規模の税源移譲が決定されました。これを受けて今年の改正で、所得税から個人住民税への3兆円規模の本格的な税源移譲が実施されます。この税源移譲にあたっては、所得税及び個人住民税の役割分担を明確化するとともに、全ての納税者の負担が増えないように最大限の配慮がされます。

 具体的には、所得税においては所得再分配機能、個人住民税においては応益性や偏在度の縮小といった観点を重視し、個人住民税の所得割を一律10%とする比例税率化(フラット化)が行われます。これに対応して、所得税については最低税率を5%に引き下げ、最高税率を40%にした上で、現行の4段階から6段階の税率構造に改正されます。また、道府県民税と市町村民税の税率については、国庫補助負担金改革における都道府県と市町村への影響額を基本としつつ、基礎自治体である市町村の果たす役割にも留意し、道府県民税が4%、市町村民税が6%とされます。

 この改正により、税率構造が全面的に改められますが、あくまでも、国から地方への税源移譲が目的とされていますので、個々の納税者の支払う所得税と個人住民税との合計額に増減を伴うものではありません。しかし、個人住民税が一律10%にフラット化されることにより負担増となる層が生じたり、住宅ローン控除の適用者の中には控除される所得税が減少する者も生じてくることから、それらの場合については個人住民税で減額措置が講じられます。

【所得税と住民税の税率構造の改正】
現 行
所 得 税 個人住民税
課税所得 税率 課税所得 税率
 〜330万円 10% 〜200万円 5%
  330万円超
 〜900万円
20%  200万円超
〜700万円
10%
  900万円超
〜1,800万円
30%  700万円超 13%
 1,800万円超 37%
平成18年度税制改正
改正案
所 得 税 個人住民税
課税所得 税率 課税所得 税率
 〜195万円 5% 一律

減税措置
全世帯において
人的控除の差を
考慮した減額措
置を実施
10%
  195万円超
 〜330万円
10%
  330万円超
 〜695万円
20%
  695万円超
 〜900万円
23%
  900万円超
〜1,800万円
33%
 1,800万円超 40%
減収額:30,970億円程度 減収額:30,100億円程度
適用期日
所得税率については、平成19年分以後の所得税について適用され、個人住民税率については、平成19年度分以後の個人住民税から適用されます。


 税源移譲は、概ね3兆円規模とし、所得税から個人住民税への恒久措置として行われます。
平成18年度においては、暫定的措置として税源移譲額の全額(3兆94億円)を所得譲与税によって措置されます。
税源移譲は平成19年分の所得税及び平成19年度分の個人住民税から適用されます。
 その際、個々の納税者の税負担が極力変わらないよう配慮しつつ、所得税及び個人住民税の役割分担の明確化が図られます。具体的には、以下のとおりです。
個人住民税は、応益性や偏在度の縮小といった観点を踏まえ、所得割の税率が10%にフラット化されます。
所得税は、所得再分配機能が適切に発揮されるよう、より累進的な税率構造(最低税率5%・最高税率40%の設定)が構築されます。
所得税と個人住民税の人的控除額の差に基づく負担増については、所得税率の刻みや個人住民税所得割額の減額措置により調整が行われます。
 道府県民税と市町村民税の税率については、国庫補助負担金改革の影響額を基本としつつ、基礎自治体である市町村の果たす役割にも留意し、道府県民税4%、市町村民税6%とされます。

 【参考】 平成19年1月1日以後に支払うべき給与等については、今回の改正で設けられる新たな税額表等で源泉徴収を行います。また、同日以後に支払うべき公的年金等について特定公的年金等に係る源泉徴収税率が5%(現行10%)に引き下げられます。一方、個人住民税は、平成19年6月から特別徴収される金額が変わります。(退職所得に係る特別徴収税額表は廃止されます。)


個人住民税及び所得税の税率構造(改正案)
個人住民税及び所得税の税率構造(改正案)

税源移譲にあたっての基本的考え方
 所得税法及び地方税法本則の改正により、所得税から個人住民税へ恒久措置として本格的な税源移譲を実施。その際、
(1) 所得税・個人住民税の役割分担を明確化

  { 所 得 税 所得再分配機能
個人住民税 応益性・偏在度の縮小 ⇒ フラット化
(2) 個々の納税者の負担の変動を極力抑制
(3) 全体として『あるべき税制』の方向性と整合的な姿を確保


 

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