【1】労働者派遣とは 労働者派遣法2
自己の雇用する労働者を、他人の指揮命令を受けて、他人のために労働に従事させることをいいます。
労働者派遣の仕組みは、(1)派遣元と(2)派遣労働者との間で雇用契約が締結され、派遣労働者が(3)派遣先で従事する仕事の内容や賃金等について取り決められます。
次図で示すように、派遣先が事実上派遣労働者を指揮命令する立場に立つだけで、派遣先と派遣労働者との間には、雇用契約関係はありません。
【2】労働者派遣契約 労働者派遣法26
派遣元と派遣先は労働者派遣契約を締結し、派遣先が派遣元に支払う派遣料金や派遣労働者の業務内容、就業場所、就業中の派遣労働者を直接指揮命令する者、派遣期間、派遣人員、安全・衛生等に関する事項を決めます。
【3】対象業務 労働者派遣法4
下記以外の業務が労働者派遣事業の対象業務となります。
- ※派遣適用除外業務
- (1) 港湾運送業務
- (2) 建設業務
- (3) 警備業務
- (4) 医療関係の業務(医師の業務、歯科医師の業務、薬剤師の業務、保健師・助産師、看護師、管理栄養士の業務等)
(注) ただし、病院等における医業等の医療関連業務について、紹介予定派遣の場合等は派遣が可能です。
【4】紹介予定派遣 労働者派遣法2
- (1) 派遣期間終了後に派遣労働者と派遣先労働者が合意すれば、社員として雇用されるという前提で派遣される制度です。
- (2) 派遣就業開始前又は派遣就業期間中の求人条件の明示、派遣就業期間中の求人・求職の意思の確認及び採用内定を行うことができます。
- (3) 派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等で派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為ができます。
- (4) 紹介予定派遣の場合は、同一の派遣労働者について6ヶ月を超えて派遣を行ってはなりません。
【1】日雇派遣の原則禁止 労働者派遣法35の4
派遣元事業主は、一定の業務(ソフトウエア開発、機械設計等専門的知識を有する業務で日雇労働者を従事させても支障がないと認められる業務)及び一定の労働者(60歳以上の者、雇用保険が適用されない学生等)を除き、日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者(日雇労働者)について、労働者派遣を行ってはなりません。
(注) 日々又は30日以内の制限は、労働者と派遣元事業主との雇用期間であり、派遣先への派遣期間ではありません。したがって、派遣元事業主との雇用期間が31日以上の労働者であれば、派遣先は、2週間でも、10日間でも派遣労働者を受け入れることができます。
【2】グル−プ企業内派遣の制限 労働者派遣法23の2
- (1) 派遣元事業主は、関係派遣先(派遣元事業主の親会社、派遣元事業主の親会社の子会社等)に労働者派遣するときは、関係派遣先への派遣割合(注)を8割以下にしなければなりません。派遣割合は、労働時間で計算されます。
- (2) 派遣元事業主は、(1)に規定する関係派遣先への派遣割合を厚生労働大臣に報告しなければなりません。
(注) 1事業年度において、派遣元事業主が雇用する派遣労働者(60歳以上の定年退職者を除く)の関係派遣先での派遣就業に係る総労働時間を、その事業年度における派遣元事業主が雇用する派遣労働者のすべての派遣就業に係る労働時間で除して得た割合をいいます。
【3】離職後1年以内の労働者派遣の禁止 労働者派遣法35の5
- (1) 派遣先事業主は、労働者派遣に係る労働者が当該派遣先を離職した者であるときは、離職後1年を経過するまでは、その労働者を派遣労働者として受け入れることができません、
- (2) 派遣元事業主は、上記@に該当する労働者については、労働者派遣を行ってはなりません。
(注) 60歳以上の定年退職者は、禁止対象から除外されています。
【1】有期雇用派遣労働者等の雇用の安定措置 労働者派遣法30
派遣元事業主は、同一の組織単位に継続して1年以上派遣される見込みがあるなど一定の場合には、派遣労働者に対し、(1)派遣先への直接雇用の依頼、(2)新たな就業機会(派遣先)の提供、(3)派遣元事業主による無期雇用、(4)その他雇用の安定を図るために必要な措置(紹介予定派遣等)を講じなければなりません。
【2】派遣契約の中途解除時への対応 労働者派遣法29の2,26
- (1) 派遣先事業主は、派遣先の都合により派遣契約を解除する場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保、休業手当の支払に要する費用の負担等の措置を講じなければなりません。
- (2) 労働者派遣の当事者は、労働者派遣契約の締結に際し、派遣契約の解除時に講ずる派遣労働者の新たな就業機会の確保、休業手当の支払に要する費用の負担等に関する事項を定めなければなりません。
【3】派遣労働者のキャリアアップ推進 労働者派遣法30の2
派遣元事業主は、雇用している派遣労働者のキャリアアップを図るため、「段階的かつ体系的」な教育訓練、希望者に対するキャリア・コンサルティングを実施しなければなりません。
【4】均衡待遇の確保 労働者派遣法30の3他
- (1) 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者等との均衡を考慮した賃金決定や、教育訓練・福利厚生の 実施等に配慮しなければなりません。
- (2) 派遣先事業主は、派遣元事業主による均等待遇の確保に向けた措置が適切に講じられるよう、必要な情報を派遣元事業主に提供する等その協力に努めなければなりません。
【5】待遇に関する事項等の説明 労働者派遣法31の2
派遣元事業主は、派遣労働者として雇用しようとする労働者に対し、労働契約締結前に、次の事項を書面・メール等により説明しなければなりません。
- (1) 派遣労働者として雇用した場合における賃金額の見込みその他の待遇に関する事項
- (2) 事業運営に関する事項
- (3) 労働者派遣制度の概要
【6】派遣料金額の明示 労働者派遣法34の2
派遣元事業主は、雇入れ時・派遣開始時・派遣料金額の変更時において、派遣労働者に対し、次の事項のいずれかを書面・メール等により明示しなければなりません。
- (1) 当該派遣労働者本人の派遣に関する料金額
- (2) 当該派遣労働者が所属する事業所における派遣料金額の平均額
2−3−4 派遣期間の制限等
労働者派遣法40の2
「事業所単位」と「個人単位」の2つの期間制限が設けられています。ただし、派遣元事業主に無期雇用されている派遣労働者及び60歳以上の派遣労働者等は、期間制限を受けません。
[1] 事業所単位の期間制限
派遣先の同一事業所における派遣労働者の受入れは、3年が上限となります。
3年を超えて派遣労働者を受け入れるためには、期間経過日(派遣開始日から3年を経過する日)の1ヶ月前までに、派遣先の労働者過半数労働 組合又は労働者の過半数を代表する者に、派遣可能期間を延長しようとする事業所及び延長しようとする期間を書面で通知した上で、その意見を聴かなければなりません。なお、この意見聴取は3年毎に行う必要があります。
派遣先では、意見聴取を行い、3年ごとに派遣労働者を変えれば、どの業務でも、3年を超えて派遣労働者を受け入れることができます(次図参照)。
[派遣先の同一事業所における派遣労働]
[2] 個人単位の期間制限
派遣先の同一組織単位(課、グループ)における同一の派遣労働者の受入れは、3年が上限となります。
したがって、個人単位では一つの課で働けるのは、原則3年までとなります。派遣先が意見聴取により、継続的に派遣労働者を受け入れることができる場合であっても、派遣労働者側から見ると、派遣元との間で無期雇用契約を締結しない限り、3年おきに仕事内容が変わってしまうことになります(次図参照)。
[派遣先の同一事業所における派遣労働]
(1) 総務課
(2) 営業課
[3] 受入れ制限期間とクーリング期間
派遣先は、派遣可能期間を超えて派遣労働者を受け入れることはできませんが、「事業所単位」「個人単位」ともに、期間制限の通算期間がリセットされる「クーリング期間」が定められています。「クーリング期間」は、3ヶ月を超える期間です。
派遣労働者は、雇用関係にある派遣元の指揮命令下から離れ、派遣先の指揮命令下に入るため、労働基準法の適用には注意が必要です。
〔労働基準法の使用者責任の有無(主なもの)〕
内 容 | 派遣元 | 派遣先 |
労働時間、休憩、休日、年少者の労働時間・就業制限、 妊産婦の労働時間・就業制限 | | ○ |
公民権行使の保障 | | ○ |
労働契約、賃金、割増賃金 | ○ | |
年次有給休暇 | ○ | |
変形労働時間の定め・三六協定の締結及び届出 | ○ | |
※注意
派遣労働者が労働災害により、死亡又は休業したときは、派遣先及び派遣元の事業者は、それぞれの事業所を管轄する労働基準監督署に「労働者死傷病報告」を提出しなければなりません。