目次 税務2-12

 2 法人税・地方法人税
 2−12 税額控除
【1】所得税額の控除 法法40,68 ①
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[1] 控除額

 法人が各事業年度において所得税法等の規定により納付した所得税額(国税分で、復興特別所得税額を含む。以下同じ)のうち、次の金額はその事業年度の法人税額から控除できます。

(1) 証券投資信託の収益分配金、特別な割引債の償還差益、株式の配当に対する所得税額
 ──元本所有期間に対応する金額として、次の(イ)又は(ロ)で計算した額

(イ)原則法

(ロ)簡便法

(2) (1)以外の預金の利子、公社債の利子及び公社債投資信託の収益の分配に係る所得税額
 ──その全額
(注) 平成27年12月31日までに支払を受ける公社債の利子及び公社債投資信託の収益分配金に係る所得税額は、(1)と同様に元本所有期間に対応する金額が法人税額から控除されます。

[2] 地方税での扱い

 平成28年1月1日より、都道府県民税の利子割額が廃止されています。

(注) 平成27年12月31日までに支払を受ける預金の利子に係る地方税分(利子割額。以下同じ)はその全額が、また、同日までに支払を受ける公社債の利子及び公社債投資信託の収益分配金に係る地方税分は(1)と同様に元本所有期間に対応する金額が、都道府県民税の法人税割額から控除されます。
※注意

所得税額の還付
 控除しきれない所得税額は還付されますが、仮決算の中間申告による所得税額は還付されません。

【2】試験研究費に係る法人税額の特別控除 措法42の4①③⑥⑦⑨⑭⑮,42の4の2①
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[1] 税額控除

 次の算式で計算した金額を法人税額から控除することができます。

(注1) 「試験研究費」とは、製品の製造又は技術の改良・考案若しくは発明に係る試験研究のために要する費用をいいます。
(注2) 試験研究費割合は次の算式で計算します。
 
(注3) 中小企業者等とは、次に掲げる中小企業者又は農業協同組合等で青色申告書を提出する者をいいます。
  • (1) 中小企業者とは、次のいずれかに該当する法人(人格のない社団等を含む)をいいます。
     イ  資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人のうち次に掲げる法人以外の法人
      (イ)   発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上が同一の大規模法人の所有に属している法人
      (ロ)  (イ)に掲げるもののほか、発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上が大規模法人の所有に属している法人
     ロ  資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
  • (2) イに掲げる大規模法人とは、次のいずれかに該当する法人(中小企業投資育成株式会社を除く)をいいます。
    • A 資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人
    • B 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000 人を超える法人
(注4) 特別試験研究費とは、特別試験研究機関等や大学等との共同研究費及びそれらの者や特定中小企業者に委託する試験研究費等をいいます。
(注5) 増加額とは次の金額です。
  • 当期の試験研究費の額(基準試験研究費の額を超える場合に限る)−比較試験研究費の額で計算します(ただし、比較試験研究費の額の5%超に限る)。
  • 「基準試験研究費」とは、直近2事業年度で最も試験研究費の多い年度の試験研究費額をいいます。
  • 「比較試験研究費」とは、過去3事業年度の試験研究費の平均額をいいます。
(注6) 増加割合とは、増加試験研究費の額の比較試験研究費の額に対する割合をいいます。
(注7) 「平均売上金額」とは、上記(注2)における分母の金額をいいます。

(2)控除限度超過額

 繰越制度は廃止されました。

(3)適用時期

 平成27年4月1日以後開始する各事業年度(増加型及び高水準型は平成29年3月31日までの開始事業年度)について適用します。

【3】生産性向上設備等を取得した場合、一定の中小企業者等が機械等を取得した場合、地方活力向上地域において特定建物等を取得した場合及び特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の法人税額の特別控除 措法42の6,42の11の2,42の12の3,42の12の5
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 2−4−3の【6】主な特別償却参照。

【4】外国税額控除 法法69@
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[1] 控除税額

 海外支店等の所得について直接納付した外国税額、利子・配当・ロイヤルティ等で直接支払った源泉税(直接税額)や外国子会社等からの配当等に見合う外国子会社等が支払った外国税額は、内国法人が納付した外国税額とみなして(間接税額)、原則として次の算式で計算した金額が日本の法人税額から控除されます。

[2] 控除限度額を超える控除対象外国税額

 法人税の控除限度額を超える控除対象外国税額等は、法人住民税からの控除や前3年以内の控除余裕枠の利用や、3年間の繰越制度があります。

[3] 外国子会社配当等の益金不算入

 内国法人が受け取る外国子会社からの配当等の額については、原則、益金不算入とされます。

※注意

控除不足額の繰越し
 特定の税額控除については、当期で控除限度額すべてを控除できないときは、1年間の繰越しが認められます。

【5】特定の地域において雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除 措法42の12
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[1] 対象者・対象期間

 公共職業安定所等の長に雇用促進計画の届出(注1)をした青色申告書を提出する者の、平成28年4月1日から平成30年3月31日までに開始する各事業年度で適用されます。

[2] 要件

 次の@からBの要件を満たす法人(風俗営業等を除く)に適用があります。

要 件内 容
(1)事業主都合による非離職 前事業年度及びその事業年度中に、事業主都合による離職した雇用者(雇用保険一般被保険者、以下同じ)及び高年齢雇用者がないこと
(2)雇用増加 法人の使用人(注2)のうち雇用者(当該適用年度終了の日において高年齢雇用者に該当する者を除き、地域雇用開発促進法の「同意雇用開発促進地域」内にある事業所における無期雇用かつフルタイムの新規雇用者に限る。以下(3)に同じ)数が前事業年度比10%以上、かつ、5人以上(中小企業者等については2人以上)増加する(法人全体の増加雇用者数を上限とする)こと
(3)支払給与増加(注3) その事業年度における支払給与額が、前事業年度の支払給与額よりも次の算式で算定された額以上に増加すること
  前事業年度の支払給与額×雇用者増加率×30%
(注1) 公共職業安定所等の長の確認要。
(注2) 役員の親族等である使用人及び使用人兼務役員を除きます。
(注3) 支払給与額は使用人に対する給与とし、(1)役員給与、(2)役員の親族等である使用人に対する給与、(3)退職給与は除きます。
また、使用人の給与に充てるため、出向元法人からの受入金や国等からの補助金等で人件費に充当される金額等は、支払給与額から除きます。

[3] 法人税額の特別控除額

 対象増加者数× 40万円

(注) ただし、当期の法人税額の10%(中小企業者等は20%)を限度

[4] 地方拠点強化税制での法人税額の特別控除

 地方活力向上地域特定業務施設整備計画の承認日から2年以内の日を含む各事業年度において、その計画に従って当該地方拠点(認定計画上の事業所)で一定の雇用者を増加させた場合、一定の要件のもと、対象事業所の増加雇用者数×(20万円〜80万円)の法人税額の特別控除があります。

(注) ただし、当期の法人税額の30%を限度。

[5] 重複適用

 上記[3]と[4]はいずれも次の【6】と重複適用ができますが、一定の調整計算が行われます。

【6】雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除 措法42の12の4
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[1] 対象法人・対象期間

 青色申告書を提出する法人で、平成25年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度(合併以外の解散及び清算中の事業年度を除く)で適用されます。

[2] 要件

 次の(1)から(3)の全ての要件を満たす法人に適用があります。

要件内容
国内雇用者給与等
支給額の増加
(1)
*平成28年4月1日から平成29年3月31日に開始する事業年度は4%(中小企業者等は3%)、 平成29年4月1日から平成30年3月31日に開始する事業年度は5%(中小企業者等は3%)

(2)当期の国内雇用者給与等支給額≧前事業年度の国内雇用者給与等支給額

国内雇用者平均給与等支給額の増加
(3)当期の国内雇用者平均給与等支給額>前事業年度の国内雇用者平均給与等支給額
(注1) 「基準年度」とは、平成25年4月1日以後開始する各事業年度のうち、最も古い事業年度の直前事業年度
(注2) 「国内雇用者」とは、法人の使用人(役員、役員の特殊関係者及び法人の使用人としての職務を有する役員を除く)のうち、国内の事業所に勤務する雇用者
(注3) 「給与等」とは、所得税法にいう給与等で、「雇用者給与等支給額」とは、適用年度において、損金に算入された国内雇用者に対する給与等の支給額(その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合は当該金額を控除した金額)
(注4) 「平均給与等支給額」は次の算式で計算します。
  
 継続雇用者に対する給与等とは、適用年度及びその前年度において給与等の支給を受けた国内雇用者に対する給与等のうち、雇用保険法の一般被保険者に対する給与等をいいます。ただし、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の継続雇用制度に基づき雇用される者に対する給与等を除きます。
[3]法人税額の特別控除額

(当期の雇用者給与等支給額−基準年度の雇用者給与等支給額)×10%

(注)  ただし、当期の法人税額の10%(中小企業者等は20%)を限度とし、また、【5】の特定の地域において雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除と一定調整計算の上、重複適用ができます。

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