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税務調査後のフォローと対応


Q5  修正申告の勧奨……調査官に修正申告を勧められた

 1週間続いた税務調査が終わり、ほっとしたところです。しかしながら調査官から「調査日程が長びいたため、早速修正申告を提出してください」と言われました。社長は修正申告に対してなかなか理解してくれず、困っています。どうすればいいのでしょうか。


Point

 [1] 修正申告が必要になった原因分析を…
 [2] 早く修正申告をしてほっとしたいが…
 [3] 安直な修正申告ではなく原因究明を…
 [4] 修正申告が株主総会に与える影響は…



当面の対応

1 修正申告の区分
 修正申告といっても、その内容に応じて以下の2つに区分されます。すなわち、

  (1)  課税所得の基となった当期純利益の計算ミスによる修正申告
 これはたとえば売上利益の計上漏れですから、この種のミス発生の責任は原則として法人自身にあるのです。

  (2)  法人税申告書および明細書別表記載のミスによる修正申告
 この種のミス発生の責任は、主としてそれを作成した者、すなわち顧問税理士(会計事務所等)となります。

2 法人の本音
 法人と税理士の業務分担が明確になっていれば、修正申告を行う場合にもスムーズに進めることが可能なはずです。法人の本音は、調査官の気が変わらないうちに早く修正申告を実行して、税務調査を終了したいというものでしょう。

3 原因究明
 修正申告を行った結果、追徴税額が多額になるときは、法人内で、その発生原因および責任の所在が追及されることとなります。今後、二度とこのような事態が起きないよう、場合によっては経理担当役員や経理スタッフの配置転換を含めた、チェックシステムを構築する必要があるでしょう。

4 税理士解任
 税務調査終了後、顧問税理士や会計事務所の解任、あるいは過少申告加算税の10%、重加算税の30%等についての損害賠償の問題が残ります。実際に、顧問税理士(会計事務所)の責任により発生した修正申告に伴う追徴税額のうち、上記加算税等について負担している事例が多いと聞いています。


今後の対応

1 株主総会の場で
 法人の規模が大きくなり、株主が同族関係者あるいは使用人以外となった場合には、株主は、法人の決算、とくに利益および配当の問題にシビアになります。具体的には、株主総会によって承認された決算について、重大な関心をもつことになります。

2 増額修正
 株主総会において承認された決算利益が税務調査を受けた結果、増額修正された事実が明らかになれば、会計上、B/Sはもちろん、最終的にP/L当期純利益、法人税、住民税および事業税が増となります。

3 株主総会のやり直し
 このように、当期純利益、法人税、住民税および事業税が増額になれば、税務調査以前に行った株主総会では、間違った当期純利益を承認したことになりますので、本来ならば株主総会はやり直すべきでしょう。この点を配慮して、税務署所管法人は、小規模で株主も同族関係者および使用人関係者が多い場合は修正申告を勧める一方、国税局調査部所管法人は、修正申告に代えて更正決定をするようにして、この種のトラブルを未然に防いでいると聞いています。

 

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