目次 IV-2


2.取引相場のない株式の発行会社が株式を相互に持ち合っている場合
(2社持ち合いの場合)

Question
 取引相場のない株式の発行会社(2社)が株式を下図のように相互に持ち合っている場合の評価はどのようになりますか。



Answer
 複数の取引相場のない株式の発行会社が相互に株式を持ち合っている場合の株式の評価を行う場合においては、A社及びB社について、それぞれ類似業種比準価額又は純資産価額による評価の適用の関係において次のとおり区分してそれぞれ評価します。

(1) A社及びB社の評価について純資産価額を全く使用しない場合(類似業種比準価額のみでA社及びB社の株式を評価する場合)
 株式を相互に持ち合っていることは一切考慮する必要はなく、通常どおりの類似業種比準価額の計算により評価します。

(2)  A社又はB社の評価について純資産価額を使用する場合
 株式を相互に持ち合っているA社及びB社の株式を評価するときには、下記のそれぞれの態様に応じた算式により、A社の所有するB社株式の価額(算式中の記号:X)又はB社の所有するA社株式の価額(算式中の記号:Y)を求め、当該価額を基にして純資産価額を計算します。

(1)  A社及びB社ともに純資産価額で評価する場合
X=α(b+Y)
Y=β(a+X)
 したがって
X= α(b+βa)

1−αβ
Y= β(a+αb)

1−αβ

(2)  A社は類似業種比準価額と純資産価額の併用方式であり、B社は純資産価額で評価する場合
X=α(b+Y)
Y=β{LaC+(1−La)(a+X)}
したがって
X= α[b+β{LaC+(1−La)a}]

1−αβ(1−La)
Y= β{LaC+(1−La)(a+αb)}

1−αβ(1−La)

(3)  A社及びB社ともに類似業種比準価額と純資産価額の併用方式で評価する場合
X=α{LbD+(1−Lb)(b+Y)}
Y=β{LaC+(1−La)(a+X)}
したがって
X= α【LbD+(1−Lb)[b+β{LaC+(1−La)a}]】

1−αβ(1−La)(1−Lb)
Y= β【LaC+(1−La)[a+α{LbD+(1−Lb)b}]】

1−αβ(1−La)(1−Lb)

算式中の記号を示すものは次のとおりです。
X: A社の所有するB社株式の相続税評価額
Y: B社の所有するA社株式の相続税評価額
α: B社の発行済株式数のうちA社が所有する株式数の割合
β: A社の発行済株式数のうちB社が所有する株式数の割合
a: A社の、B社株式を除く各資産の相続税評価額の合計額から、各負債の金額の合計額を控除した金額(B社株式を除いて計算したA社の評価明細書第5表の「(1)−(3)」の金額)
b: B社の、A社株式を除く各資産の相続税評価額の合計額から、各負債の金額の合計額を控除した金額(A社株式を除いて計算したB社の評価明細書第5表の「(1)−(3)」の金額)
La: A社株式のLの割合
Lb: B社株式のLの割合
C: A社株を類似業種比準価額方式で評価した場合の評価額の総額(評価明細書第3表の(1)の金額に発行済株式数を乗じた金額)
D: B社株を類似業種比準価額方式で評価した場合の評価額の総額(評価明細書第3表の(1)の金額に発行済株式数を乗じた金額)

 上記の算式により求めた価額を、取引相場のない株式等の評価明細書の第5表の「資産の部」の「相続税評価額」の欄に記入することになりますが、その価額が負数(マイナス)のときは「0」と記入します。

 なお、相互に所有する株式数が少ないような場合等で、課税上の弊害がないと認められるときには、上記算式により計算することに代えて、評価の簡便性の観点から帳簿価額又は額面金額で評価することができるものと考えられます。

 

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