目次 IV-8(ホ)


(ホ)  株式保有特定会社の判定とその評価額の計算上における取扱い
(1)  株式保有特定会社の判定上の取扱い
 評価会社が株式保有特定会社に該当するか否かの判定については、財産評価基本通達189(特定の評価会社の株式)の(2)(株式保有特定会社の株式)の定めにより、評価会社が自己株式を有している場合には、当該自己株式を除外したところで、株式保有特定会社に該当するか否かの判定(株式保有割合の計算)を行うものとされています。この取扱いを算式に示しますと次のとおりになります。

 (算式)  (算式)

(2)  原則的な評価方式(純資産価額方式)による計算上の取扱い
 前記(ニ) に掲げる取扱い(項目のみを下記に掲載)と同様の取扱いとなります。

(イ)  自己株式に対する財産認識上の取扱い自己株式の価額を除外して計算
(ロ)  1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)計算上の発行済株式数の取扱い自己株式の数を除外して計算
(ハ)  持株割合が50%未満である場合における純資産価額の80%評価計算上の発行済株式数の取扱い自己株式、議決権を有しないこととされる相互保有株式及び議決権のない配当優先株式の数を除外して計算

(3)  特例的な評価方式(S1+S2方式)による計算上の取扱い
(イ)  S1の金額の計算上の(d)の計算における取扱い
 S1の金額を類似業種比準価額方式で算定する場合における(d)の計算において、各資産の帳簿価額の合計額のうちに株式等の帳簿価額の合計額が占める割合を求めるときの『直前期末の総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)』及び『直前期末の株式及び出資の帳簿価額の合計額』については、それぞれ、自己株式の価額(帳簿価額)を含めない旨の取扱いが財産評価基本通達189−3(株式保有特定会社の株式の評価)において定められています。この取扱いを算式に示しますと次のとおりになります。

 (算式)  (算式)

 このような取扱いを定めたのは、S1の金額の計算の基礎とされる受取配当金収受割合の算定の基となる受取配当金には、商法第293条(利益又は利息配当の標準)の規定(自己株式に対しては、配当が禁止されています。)により、自己株式の分が含まれていないものとされていることとの均衡に配慮したものであると考えられます。

(ロ)  S2の金額(株式等に係る純資産価額)の計算上における取扱い
 S2の金額(株式等に係る純資産価額)の計算における1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)の算定についても、評価会社が自己株式を所有する場合には、前記(ニ)(1)及び(2)の取扱いにより、当該自己株式は資産として存しないものとし、発行済株式数からはこれを除外して算定する旨の取扱いが財産評価基本通達189−3(株式保有特定会社の株式の評価)において定められています。この取扱いを算式に示しますと次のとおりになります。

 (算式)
 (算式)

  株式保有特定会社の判定とその評価額の計算において、上記(1)から(3)に掲げるような自己株式に対する取扱いを定めたのは、前記(ニ)に掲げる趣旨によるものと考えられます。

(ヘ)  配当還元評価方式の計算上における取扱い 評価対象会社の株式を特例的評価方式(配当還元評価方式)により評価する場合における計算の基礎となる『直前期末の資本金額』及び『直前期末の発行済株式数』についても、前記(ハ) に掲げる類似業種比準価額等の計算上における取扱いと同様に、当該評価会社に自己株式が存するか否かは考慮の対象とはされていません。(したがって、自己株式があったとしても、その存在に関係なく実際の課税時期に係る直前期末の資本金額及び発行済株式数を基にして計算するものとされています。)

 このような取扱いを定めたのは、配当還元評価方式自体が配当金のみに着目して評価会社の株式評価額を算定しようとする極めて簡便的な評価方式であること及びこの評価方式の計算の基礎とされる『1株(50円)当たりの年配当金額』は、類似業種比準価額方式による評価額計算の基礎とされる『(B)(1株(50円)当たりの年配当金額)』の計算方式に準じて計算されるものであること等によるものであると考えられます。

 なお、上記(ロ) における会社規模区分の判定、(ハ) における類似業種比準価額の計算及び(ヘ) における配当還元評価方式の計算において、評価会社が自己株式を所有する場合においても、当該自己株式に係る総資産価額(帳簿価額)、資本金額及び株式数については何ら考慮(調整計算)することなく求めるものとされており、その趣旨として、評価の簡便性が挙げられています。しかしながら、この評価の簡便性を過度に重視する余り、機械的形式的にこの取扱いを適用して計算した評価会社の株式評価額が課税上弊害が生じるものであると認められるような事例(例えば、自己株式の保有割合が社会通念を逸脱して著しく高い場合等が考えられます。)についてまでも、常にこの取扱いの適用が保証されているとは言い難く、財産評価基本通達第6項(この通達の定めにより難い場合の評価)の規定が適用される可能性があることも考えられますので、この点には十分に留意しておく必要があるものと考えられます。

 

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