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9 通知処分取消訴訟 |
1 通知処分取消訴訟 課税標準等又は税額等に誤りがあって税額等が過大であった場合、納税者は、税務署長に減額更正を促す「更正の請求」をして、税務署長の処分により減額されることになります(国通法23)。税務署長が「更正の請求」に理由がないとして却下する場合の処分を「通知処分」といいます。この通知処分に不服のある納税者は、通知処分取消訴訟を提起することになります。 2 通知処分取消訴訟の審理の対象 まず、通知処分取消訴訟の審理の対象について、課税処分取消訴訟と同様に、争点主義的に理解するのか、総額主義的に理解するのかが問題になります(第 I 編7参照)。すなわち、納税者が更正の請求の理由として取り上げた事由のみが審理の対象になるのかそうではないのかということです。これは総額主義的に理解し、申告額を下回るか否かを判断すべきと考えられます。なぜなら(1)国税通則法23条4項において税務署長による審理対象を請求事由に限定していないこと、(2)租税争訟においては総額主義が判例の立場として確立していること、(3)争点主義によると更正の請求には理由があるが他に増額更正事由がある場合には、いったん減額更正をした後にあらためて増額更正をすることになると考えざるを得ないからです。 3 理由の差し替えの可否 次に更正の理由の差し替えが認められるかどうかが問題となります。通知処分取消訴訟においては、納税者から更正の理由の差し替えを行うことは認められないと理解されています。すなわち、更正の請求という制度が更正の理由を記載した更正請求書に基づき税務署長が減額更正の可否を検討するものであり、税務署長がその更正の請求について理由がないと判断したら、それ以上調査する義務がないからです。 4 通知処分取消訴訟における主張・立証責任 減額更正について理由がないとして却下した場合の通知処分取消訴訟における主張・立証責任については、更正の請求を行う権利は国税通則法23条 1項の規定に基づいて納税者に認められるものですから、同項に定める下記の要件の主張・立証責任は、原告である納税者が負うことになります。
課税庁は抗弁として、正しく算出した課税標準等又は税額が納税者の申告における課税標準等又は税額を下回らないことについて主張・立証責任を負うこととなります。 |