目次 I-5


5 相手の事実の主張への対応


Question  裁判において相手の事実の主張への対応とその効果について教えてください。
ポイント

 抗弁とは、原告から出た請求原因に対する被告からの反論である。
 再抗弁とは、被告による抗弁に対する原告からの反論である。
 抗弁や再抗弁に対して有効な反論をしないと、相手方の主張を「自白した」とみなされて、証拠調べをすることなく相手方の請求が認められることになる。




Answer

1 相手の主張する事実への対応

 相手が主張する事実への被告が行うべき訴訟上意味のある対応は、次の5つです。

対   応 内     容
否認、積極否認 否認とは、事実はなかったと主張すること。積極否認とは、理由を付けて事実はなかったと主張すること。
不知 事実について知らないと主張すること。
沈黙 事実について何も語らないこと。
自白 事実を認めること。
抗弁 請求原因事実と両立して、かつ請求を排斥することができる事実のこと。

 抗弁をむずかしいことばで説明すると上記のような定義になります。簡単にいえば相手方の主張に対する反論なのですが、互いに矛盾する事実であってはならないのです。矛盾する事実があれば先行する事実の否認という形になるので、抗弁という形にはなりません。

 例えば、売買契約に基づく代金請求権が訴訟物である場合、買っていないという反論であれば「否認」です(なお、「買った」のではなく「もらった」のだという反論は、「積極否認」です。)。他方、買ったことを認めた上で、代金は既に支払ったとか、相殺したという反論であれば、原告の主張する事実に矛盾しない事実を前提とする反論ですから、「抗弁」となるわけです。


2 相手方の事実の反応と証明

 で説明した相手が主張する事実への対応と、証明あるいは裁判上の取扱いとの関係は以下のとおりです。

対   応 証明あるいは裁判上の取扱い
否認 否認又は不知をされた相手方が事実の証明を行う必要がある。
不知
沈黙 自白したとみなされ、証拠調べをすることなく、相手方の請求が認められる。
自白 証拠調べをすることなく、相手方の請求が認められる。
抗弁 相手方が抗弁事実を否認したときは、自分が抗弁事実を証明する必要がある。


3 再抗弁とは

 原告が主張する請求原因に対して被告が抗弁で対抗した場合に、原告が更なる抗弁を行うのが再抗弁です。つまり、被告の提出する抗弁が成り立つ場合に生じる法律効果を否定するため、その発生を妨げたり、それを消滅させる事実を主張することといえます。

 例えば、土地の所有権に基づく土地明渡請求権が訴訟物で、被告が土地の賃借権の存在で抗弁した場合、土地の賃貸契約の終了などのように被告の主張と両立し抗弁の効果を打ち消す効果を持つものが「再抗弁」とされます。

 

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