目次 第1章 第1節 2


設例1  被相続人所有地と相続人所有地が隣接している場合の評価の考え方

 例えば、下図のように被相続人所有宅地(相続財産)B地と相続人乙所有宅地A地が隣接しており、B地を乙が相続により取得した場合、B地はどのように評価すべきでしょうか。

 一般的には次の2通りの評価方法が考えられるのではないでしょうか。

 相続人乙はA地も所有しており、B地はA地と一体となることによりB地及びA地が全体として角地になるので、全体を角地として評価してその価格を面積比等により配分してB地を評価する。

 B地を単独で評価する。B地は一方路線地として評価する。


解 説

 上記イのA地と一体として評価して得られる価額は、B地とA地とを併合する場合に成立する時価です。言い換えれば、隣地を所有する特定の者にのみ成立する併合による価値の増分を含んだ価額です。これは、不動産鑑定評価基準では限定価格として概念される価格です。

 ロの評価方法によって得られる時価は、一般の市場参加者、すなわち不特定多数の当事者間で成立するであろう価額です。

 評価通達で定める時価とは、ロの評価方法によって求められた価額です。したがって、評価通達に規定する時価の考え方からロの方法により評価すべきことになります。

 参 考
【不動産鑑定評価基準】総論第5章第3節 I
2.限定価格

 限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいう。
 限定価格を求める場合を例示すれば、次のとおりである。
(1) 借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合
(2) 隣接不動産の併合を目的とする売買に関連する場合
(3) 経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買に関連する場合

 

目次 次ページ