目次 第1章 第1節 2


2 評価通達における時価

 評価通達では時価の意義について、「時価とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。」(評価通達1(2))としています。

 この評価通達の時価に関する規定のなかでも、アンダーラインを付した部分は土地評価の実務を行うに当たって特に重要となるポイントです。

 具体的にこれらについて説明します。


(1)  「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」であること

 この規定から、評価通達で採用する時価の概念は、不動産鑑定評価基準に定める「正常価格」と同義であると解されます。「正常価格」とは、売り進みや買い進み等の特別の事情がない状況で自由な市場で成立するであろう価格をいいます。

 参 考
【不動産鑑定評価基準】総論第5章第3節 I
1.正常価格

 正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。この場合において、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場とは、以下の条件を満たす市場をいう。
(1)  市場参加者が自由意思に基づいて市場に参加し、参入、退出が自由であること。
 なお、ここでいう市場参加者は、自己の利益を最大化するため次のような要件を満たすとともに、慎重かつ賢明に予測し、行動するものとする。
  [1]  売り急ぎ、買い進み等をもたらす特別な動機のないこと。
  [2]  対象不動産及び対象不動産が属する市場について取引を成立させるために必要となる通常の知識や情報を得ていること。
  [3]  取引を成立させるために通常必要と認められる労力、費用を費やしていること。
  [4]  対象不動産の最有効使用を前提とした価値判断を行うこと。
  [5]  買主が通常の資金調達能力を有していること。
(2)  取引形態が、市場参加者が制約されたり、売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような特別なものではないこと。
(3)  対象不動産が相当の期間市場に公開されていること。

 

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