目次 IV-4


4 未分割財産は物納でとってくれない

 相続税は相続税の申告書の提出期限までに金銭で一括納付するのが原則です。しかし、一定の要件を満たせば金銭による一括納付が困難であるときには「延納」が認められ、その延納による納付が困難な場合には「物納」が認められます。延納制度や物納制度は相続税納付の特例であり、申告期限(納付期限)までに申請書を税務署に提出し、定められた適用要件を満たしている場合に限り認められます。

 ところで、申告期限までに遺産分割が決まらない場合には、民法に規定する相続分により相続財産及び債務の金額を計算し、これに基づいて申告し、各相続人がそれぞれの相続税額を納付することとされています。その後、遺産分割が決まれば、各相続人が実際に相続した財産及び継承した債務の金額に基づいて税額を計算し直し、当初の申告より税額が増えた人は修正申告をして増えた税額を支払い、逆に減った人は更正の請求により税額を返してもらうことになります。

 一方、物納申請は納付期限までとなっていますので、遺産分割決定後、修正申告書や更正の請求と併せて物納申請を行っても間に合いません。そのため物納の可能性がある場合には未分割の場合でも物納申請だけはしておくべきです。しかし、遺産分割が調っていないということは、相続財産の所有権が確定しないということですから、相続財産は共有に属しているとして、物納財産としては不適当とされています。

 ですから、分割が確定していない状態にある相続財産の物納は原則として許可されず、物納による納税が明らかに有利な場合であっても、適用できなくなることになります。

 

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