目次 III-2


2 遺産分割に当たっての留意点

 相続税対策は生前に時間をかけて行うのが理想ですが、不幸にして何の対策も講ずることなく相続が発生してしまうことも珍しくありません。しかし、相続発生後でも遺産分割の工夫等により相続税等を軽減させることは可能です。

 そこで税負担の軽減を考慮した遺産分割をする場合、特に留意すべき点をあげると次の4点になります。

(1) 今回の相続税の軽減を考えた遺産分割
 配偶者の税額軽減制度を活用したり、自社株の分割取得、土地の分割取得などで今回の相続税の軽減を図ります。

(2) 今回の相続税の納税を考えた遺産分割
 延納や物納を考慮した遺産分割により、有利な納税方法を選択します。

(3) 相続後の所得税の軽減を考えた遺産分割
  相続後の相続人各自の所得税の累進税率を考慮した分割や、遺産を相続した後、譲渡する場合の譲渡税などを考慮した分割を考えます。

(イ)  地代家賃などの収入が発生する財産は所得の低い人が相続することにより、所得税の超過累進税率を低く抑えることができます。

(ロ)  居住用財産は、その家屋に居住している人が相続し、その後売却すれば3,000万円の特別控除の特例が利用できます。

(ハ)  不動産所得を得るための借入金などについては、その不動産を相続する人がその債務についても相続するようにします。これによりその後の借入金利息などについては、相続人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されることになります。

(4) 次の相続税の軽減を考えた遺産分割
  第二次相続は、そう遠くない将来に発生することが予想されますので、第二次相続の時に相続税の負担が軽減できるように、今回の相続の時に、将来値上がりすると思われる財産は子が相続し、値上がりしない又は下落すると予想される財産や消費される財産は、配偶者が相続することが基本です。

 以上のような点を考慮して遺産分割を行うためには、相続税の申告期限までに共同相続人による円満な協議分割ができることが前提となります。

 

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