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5 預金通帳のチェックポイント

 金融資産の残高の確認のために残高証明書が必要となりますが、そのほかに、名義預金等の判定のために、過去5年間程度の預金の動きを精査する必要があります。不動産の売却があった場合や大口資産家の場合には、過去10年程度までさかのぼって確認した方がよいと思われます。

 通帳が残っているときは通帳で預金の動きを確認することが可能ですが、残っていないときは金融機関に取引記録(被相続人のほか配偶者・同居親族や相続人のものも含めて)の発行を依頼します。発行までにはかなりの時間を要しますので、早めに手配すべきでしょう。発行に要する手数料は金融機関によって異なり、手数料不要の金融機関もあります。

 取引記録をチェックして、大きな資産の移動があった場合には、その理由を確認します。親族間で資金の移動があった場合には、特に注意が必要です。

 株式については、その株式の取得の際又は払込みの際の事実関係のほか、配当等の処理や株券の保管状況などが判定の決め手となります。

 税務調査の際には、名義預金等や上場株式等については、税務署側の必ずチェックするポイントとなっていますので、申告に当たっても特に注意が必要となります。

〈具体的なチェックポイント〉

(1)  毎月又は継続した出金がある場合、それは財産価値のあるものへの振替ではないかと推定し確認する
(2)  生命保険料等の引落しがある場合、生命保険金や生命保険契約に関する権利として申告がされているか確認する
(3)  借入金の返済が定期的に行われている場合、債務との関連を調査することになる
(4)  毎月入金されているものがあれば、貸付金等の回収ではないかと推定し確認する
(5)  端数のついている出金又は入金がある場合、何らかの目的をもった入出金であることが多く、申告漏れ財産の発見の端緒になる
(6)  定期預金等の満期があった場合、預け替えはどこに、誰の名義で行われているかを確認し、名義預金の存在を確認する
(7)  配当金の入金がある場合、その株式はどこの証券会社に預けてあるか、また、端株の存在を推定したりする
(8)  固定資産税等の支払がある場合、遠隔地の不動産がないかを確認する
(9)  大口の預金の現金引出しがある場合、どのような財産に転化されたのかを確認する
(10)  振替による入出金の先を確認し、不表現財産の発見に努める
(11)  貸金庫の利用料金の振替出金を確認し、その存在の有無を調べる
(12)  公共料金や税金の振替口座を利用している預金を確認し、当然あるべき預金が申告されているかを調べる
(13)  相続発生直後の入出金から遺産として計上すべき財産又は債務として控除すべき財産がないかを調べる

 

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