III-9 |
9 脱税等の定義・時効・実刑と罰金の目安 |
(1) 脱税・節税・租税回避の定義 相続税対策や申告に当たり、脱税・節税・租税回避の定義を理解し、税務調査等において不用意に課税されることがないよう留意したいものです。 脱税・節税・租税回避は一般には以下のように定義されています。
(2) 税務上の時効 国税における時効期間としての定めは、国税通則法及び地方税法において、原則として法定納期限から5年間行使しないことによって、時効により消滅することとしています。そのため、納税義務は、原則として法定納期限から5年を経過すれば、時効によって消滅することとなります。ただし、偽りその他不正の行為によって免れ又は還付を受けた租税については、その時効は、原則として法定納期限から2年間は進行しませんから、この場合の時効期間は、実質的には7年間となります。 偽りその他不正の行為とは、「真実の所得を隠ぺいし、それが課税の対象となることを回避するため、所得金額をことさらに過小に記載した内容虚偽の確定申告書を提出する行為」と最高裁で判示し、単に確定申告書を提出しなかったという消極的な行為だけではこれに当たらないとしています。 国税の徴収権の時効については、その援用を要せず、また、その利益を放棄することができないため、時効完成後の納税は過誤納として還付されます。なお、時効完成の効力は起算日まで遡りますから、以降の利子税、延滞税も同様に消滅します。 また、税務調査などにより税金の増額更正を受けた場合には、納税義務の消滅時効の中断事由に該当します。そのため、増額更正の部分のみが納期限の翌日から新たに5年の時効期間が進行することになります。 〈時効の具体例〉
(3) 実刑の目安と罰金額 捕脱税額が1億円以上で申告率がゼロか著しく低く(捕脱税額が高く)、捕脱の手口も申告納税制度の根幹を破壊するような悪質なものは実刑率が高くなります。また、捕脱税額が3億円以上の場合にも、実刑率が高くなります。その場合、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金(脱税額が上回る場合には脱税相当額以下)に処し、又はこれを併科するとされています。 しかし、被告人が本税、附滞税の全部あるいは一部(相当部分)を納付している場合は、他に被告人に有利な状況(例えば、捕脱資金を個人的に費消していない等)があれば、執行猶予相当となることもあります。 実刑以外に罰金刑を併科することは、最高裁によって重加算税を賦課しても二重処罰に当たらないと判示されていますので、罰金額刑罰として併科されることになります。法の規定は、最高限度脱税額と同額までの罰金額まで併科が可能であるとされています。 実務上では、捕脱税額の20%から40%相当が多く、捕脱税額と同額の罰金刑罰はほとんどみられません。また、ほとんどのケースで、実刑のほか罰金刑が科されています。 なお、我が国の一般的な起訴基準は、単年度の脱税額が平均3,000万円から5,000万円であるといわれています。 |