目次 I-1


 相続とは、死亡した者と一定の親族関係にある者が、死亡した者の財産上の権利義務を法律上当然に承継することをいいます。しかし、広義には、死亡した者の財産上の権利義務が他の者(自然人又は法人)に移転することと解されます。いずれにせよ、現行法での相続は、遺産相続に限られるということです。

 それでは、なぜ、人の死亡を原因として、その死亡した者と一定の親族関係にある者がその遺産の相続を認められるのかということですが、学説は一般に、その根拠を、「私有財産制度の下における家族的共同生活の必要」性に求めています(我妻栄・有泉亨・遠藤浩・川井健『民法3 親族法・相続法』(勁草書房、第3版、2013年)243−245頁)。すなわち、親族関係が家族的共同生活の横の協同関係であるとすれば、相続は縦の協同関係であるということ、もう一つは、家族の中の一員の死亡にあたり、生存家族員の生活保障のために行われる死亡した者の遺産の清算にある、ということです。そしてその背後には、被相続人の「意思の推定」の要素があると考えられています。

 さて、Tでは、まず相続税の課税の前提になっている現行民法の規定を概観しておくことにします。

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