目次 II−1−(3)


(3) 契約書の重要性

[1] 契約

 契約とは、当事者間の約束のことをいいます。契約の方式については、契約自由の原則が適用され、口頭による契約も有効ですが、後日の紛争予防の観点からは、契約内容を書面で残しておく必要性は高いでしょう。


[2] 書面による契約

 法律上、書面で契約書を作成することが義務付けられている契約もあります。この場合は、書面による契約をしなければ、その契約自体は無効です。書面による契約が義務付けられている契約は、主に次のとおりです。

農地の賃貸借契約
建築工事請負契約の締結
割賦販売法に基づく月賦販売契約
定期借家権設定契約
事業用定期借地権設定契約
更新のない定期借家契約
取壊予定の建物賃貸借契約

 会社は日々、さまざまなリスクを負いながら取引をしています。何ら問題なく取引が継続している場合は、契約書を作成する必要性をあまり感じません。しかし、何らかのトラブルが発生した際には、契約書を作成することや、作成した契約書にお互いが捺印しあうことができない状況に陥っているケースが多いでしょう。そこで、取引関係が良好であるからこそ、今後もその良好な取引関係を継続するために、契約書を交わし、両当事者が後日のトラブルに備える必要があります。


[3] 紛争解決の処理規範

 契約書は、その取引における紛争解決の処理規範ともいえるため、作成前に次の点を確認する必要があります。

その取引においてトラブルが生じやすい事項
その取引における法律の規定

 また、契約書はその取引に関する裁判が係属した場合には、重要な証拠資料となりますので、法律よりも、できる限り自己に有利な規定を定めておく必要があります。契約には、私的自治の原則があり、公序良俗や強行法規に反しない限り、当事者の意思が優先されます。よって、トラブル発生の際にできる限り自己に有利な解決ができるよう契約書の規定を検討する必要があります。

 契約書は、次の点をポイントに作成しましょう。

契約成立のための要件は満たされているか
契約の当事者が確定しているか
契約の成立時期や有効期間が明記されているか
契約の趣旨や目的が明確になっているか
契約の対象物が正確に表示されているか
当事者の権利、義務の内容が明確になっているか
法律効果の発生が、明確に定められているか
誰からも理解できる内容として定められているか
使用されている言語に統一性はあるか
強行法規や公序良俗に反した内容となっていないか

 契約書を作成するには、その取引における法律の適用やリスクを検討する必要があるため、法律専門家のアドバイスを受けることをお薦めします。

 

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