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(2) 契約の種類

 契約の種類は、大きく2つに分けられます。民法で典型的な契約として定められている典型契約。民法には定められていない非典型契約の2種類があります。契約は法律で定められている契約以外でも原則、当事者の合意があれば適法に成立します。ただし、公序良俗に反する契約は当然に無効です。

 典型契約は、次のとおり13種類あります。

贈与契約
売買契約
交換契約
消費貸借契約
使用貸借契約
賃貸借契約
雇用契約
請負契約
委任契約
寄託契約
組合契約
終身定期金契約
和解契約


[1] 贈与契約

 贈与契約とは、一方当事者が、自己の財産を無償で与えることを相手方と約束する契約をいいます。「これあげる。」「ありがとう。」と口頭による合意で成立しますが、その合意内容を書面で残していない場合は、両当事者から取消しすることができます。ただし口頭で合意をした場合であっても、相手方への引渡が終了している部分は、取り消すことができません。また、贈与契約は、無償で財産を与えますので、原則、贈与者は瑕疵担保責任を負いません。


[2] 売買契約

 売買契約とは、一方当事者が相手方に財産を移転することを約束し、その相手方がこれに対する代金を支払うことを約束する契約をいいます。買い主が、売り主に手付金を支払った場合は、買い主又は売り主がその契約の履行に着手するまでは、買い主はその手付金を放棄して、契約を解除することができます。

 売買契約の目的物について、隠れた瑕疵(欠陥)があった場合には、売り主は契約解除や、損害賠償請求をすることができます。これを、売り主の瑕疵担保責任といいます。売り主が瑕疵担保責任を負わない旨の特約も有効ですが、その場合であっても、売り主がその事実を知っていながら故意に告げなかった事実等に関しては、責任を免れることができません。

 他人の物を売買する契約も有効とされていますが、売り主はその権利を取得して買い主に移転する義務を負います。

 代金の支払いについては、原則、売買の目的物の引渡と同時履行の関係にあります。


[3] 交換契約

 交換契約とは、当事者がお互いに金銭以外の財産を移転することを約束しあう契約のことをいいます。売買契約も財産を交換しあう契約ですが、売買契約の場合、買い主から売り主に渡される財産は金銭である一方、交換契約の場合は両当事者が金銭以外のものを渡すことが相違点です。


[4] 消費貸借契約

 消費貸借契約とは、一方の当事者が相手方から金銭のような代替物を受け取り、その代替物と同種・同等・同量のものを返還することを約束する契約のことをいいます。お金を貸し借りする契約が、消費貸借契約の典型例といえるでしょう。消費貸借契約において、その返還の時期について合意していなかった場合は、貸し主が、相当の期間を定めて返還してくれるように催告することができます。返還時期を定めている場合は、借り主は、当然に返還時期まで返還する義務がありません。


[5] 使用貸借契約

 使用貸借契約とは、一方当事者が相手方から物を受け取り、その物を無償で使用・収益をした後に、その同一の物を返還することを約束する契約のことをいいます。その物を借りている間、その物を使用するのに必要な費用は、借り主が負担します。また、契約期間を定めなかった場合、貸し主はいつでも返還を請求することができます。契約期間を定めた場合は、原則、契約期間終了時まで、借り主は返還義務を負いません。使用貸借契約は、借り主にとっての負担が少ないため、貸し主の好意に基づくものであることが多いでしょう。


[6] 賃貸借契約

 賃貸借契約とは、一方当事者が相手方にある物を使用させたり収益させたりすることを約束して、相手方はその物を使用したり収益したりすることに対して賃料を支払うことを約束する契約をいいます。日常的に利用されている賃貸借契約としては、不動産賃貸借契約が有名ですが、不動産賃貸借契約は、借地借家法という別の法律で、民法による定めよりも賃借人が保護されています。

 賃貸借契約の対象物(賃借物)を使用、収益するために必要な修繕費用は、賃貸人が支払う必要があります。また、その修繕費を賃借人が負担した場合は、賃借人は賃貸人にその費用を請求することができます。

 賃借人は、賃貸人の承諾がなければ、賃貸借契約に基づく賃借権を他人に譲り渡したり、転貸することができません。これは、賃貸借契約が、当事者同時の信頼関係に基づく契約であるためです。賃借人が勝手に賃借権を譲渡転貸した場合、賃貸人は賃貸借契約の解除の申入れをすることができます。


[7] 雇用契約

 雇用契約とは、一方当事者が相手方に対して労働に従事することを約束し、相手方がその労働に対して報酬を与えることを約束する契約をいいます。労働者の権利は、労働基準法によって、保護されています。

 使用者は、労働者の承諾を得なければ、雇用契約に基づく権利を第三者に譲渡することができませんし、労働者は、使用者の承諾を得なければ自分の代わりに第三者をその労働に従事させることができません。これは、雇用契約が当事者同士の信頼関係に基づく契約であるためです。


[8] 請負契約

 請負契約とは、一方当事者がある仕事を完成させることを約束して、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約束する契約をいいます。請負契約では、雇用契約とは相違して、特約がない限り、請負人は注文者の許可を得ずに、請負契約に基づく仕事を第三者に行わせることができます。これは、請負契約では、当事者同士の信頼関係よりも、その仕事の完成が目的とされた契約であるためです。

 請負契約による報酬の支払時期は、仕事の目的物の引渡と同時履行の関係にあるとされており、また、請負人は、原則として、完成した仕事の目的物に対して瑕疵担保責任を負っています。そして、完成した仕事の目的物に瑕疵があったことにより、契約の目的を達成することができない場合は、目的物が土地、建物等の工作物である場合を除き、注文者は契約の解除をすることができます。


[9] 委任契約

 委任契約は、一方当事者が法律行為をすることを相手方に委託して、相手方がこれを承諾することを約束する契約をいいます。税理士の顧問契約は、委任契約の一種といえるでしょう。委任契約では、特約がなければ受任者は委任者に対して報酬を請求することができません。また、報酬を受ける特約をした場合であっても、受任者は委任事務を履行した後でなければ、その報酬を請求することができません。ただし、委任事務を遂行するにあたり、報酬とは別に費用を要する場合は、受任者が請求すれば、委任者はその費用の前払いをする必要があります。

 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を遂行する義務を負います。また、受任者は、委任者から請求があった場合には、いつでも、委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、その経過及び結果を報告しなければなりません。

 委任契約は、各当事者がいつでもその契約を解除することができます。ただし、次の事由が発生した場合には、委任契約は当然に終了します。

委任者又は受任者の死亡
委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けた場合
受任者が後見開始の審判を受けた場合


[10] 寄託契約

 寄託契約は、一方当事者が相手方のためにある物を保管することを約束して、その物を受け取ることによって効力を生じる契約のことをいいます。寄託を受けた物(受寄者)が報酬を請求することができない無償寄託契約の場合は、受寄者はその物の保管について、自己と同一の注意をもって、寄託物を保管すればよいこととされています。

 受寄者は、寄託者の承諾がなければ、寄託物を使用したり、第三者に保管させたりすることができません。


[11] 組合契約

 組合契約は、各当事者が出資をして、共同の事業を営むことを約束することによって、効力を生じる契約をいいます。


[12] 終身定期金契約

 終身定期金契約とは、一方当事者が、自分や相手方、第三者の死亡に至るまで、定期的に金銭やその他の物を相手方や第三者に給付することを約束することによって効力を生じる契約をいいます。


[13] 和解契約

 和解契約とは、当事者が互いに譲歩をして、当事者同士に存在している争いをやめることを約束する契約のことをいいます。交通事故事件における示談は、和解契約の典型例です。

 

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