目次 IV-2


2 転籍前の法人が一部負担する転籍者の給与(2)


Question

 当社では事業の再編を進めていますが、この度当社の営業の一部を関係会社へ譲渡しました。また、当該営業に属する従業員各人とは合意書を交して、当社をいったん退社させて、改めて関係会社と雇用契約を締結することにしました。

 関係会社における転籍者の給与は、当社での給与を上回る者も下回る者もあり、上回る者であっても成果報酬部分が減少すれば来年度は下回ることもあり得るというように、当社での給与体系とガラリと変わります。このため、上記合意書において転籍後3年間は従来の当社ベースの給与を下回る場合はその部分を補償することを取り決めています。

 この結果、転籍者の中で較差補てんのある者とない者が混在することになりますが、税務上問題ありませんか。



Answer

 転籍の理由は専ら貴社の事業再編をスムーズに進めるためという事情に基づくものであること、及び給与の較差補てんは元従業員との合意書に基づくものであることにより、関係会社に対する寄附金には該当しないと考えます。


 ◆転籍者に対する給与較差補てん金は原則として寄附金となる

 昨今のわが国経済構造の急激な変化に伴い、企業の持つ経済資源を機敏に自己にとって有利に配分しなければ、市場からの退場を命じられる可能性がでてきました。このため企業分割などの法整備が急がれますが、労務面においても従来のような出向を中心とした「ミルク補給型(給与較差補てん型)」タイプから、一応雇用の継続は保証されながらも、いったん退職して再雇用するタイプの転籍形態が増加していくと思われます。

 転籍については、「雇用関係がないのだから較差補てんは原則としてない。もし補てんすれば寄附金となる」というのが税務の考え方です。しかし、転籍であっても給与較差補てんが妥当な場合もあり得るというのが前問の例でした。本問においてはもっと積極的に、事業の再構築という専ら転籍前法人の事情に基づくもので、これを実施しなければ自らが衰退してしまうというせっぱつまった状況を十分に説明することができれば、給与較差補てんが認められるのではないかという例です。

 また、転籍する従業員各人との合意書があるため、この給与較差補てんは転籍者に対する義務の履行としての性格を持ち、この面からも寄附金に該当しないと考えられます。

 

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