目次 III-6


6 出向に伴う役員報酬限度額


Question

 当社では、新しくS社よりAを常務取締役として迎えました。給与は出向元法人であるS社が支払い、出向先法人である当社は経営指導料を出向元法人へ支払うこととしましたが、株主総会で決議した取締役報酬支給限度額は下記のままで変更しておりません。

 (1) 株主総会決議 取締役月額報酬限度額300万円

 (2) 現在の取締役報酬実際支払額280万円

 (3) Aについて出向元法人へ支払う月額経営指導料  30万円

 なお、この経営指導料は出向元法人が自己の使用人であるAに支払う給与相当額です。税務上どのような問題が生じますか。



Answer

 経営指導料30万円を他の取締役に支給されている報酬月額280万円に加えると、取締役報酬限度額300万円を10万円超過し、当該10万円部分は損金の額に算入されません。


 ◆役員報酬のうち不相当に高額な部分は損金不算入

 役員報酬のうち不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入されませんが、この不相当に高額な部分の金額とは次の(イ)又は(ロ)の金額であり、(イ)と(ロ)の双方に該当する場合は、いずれか多い方の金額となります(法法34(1)、法令69)。

 (イ)  実質基準……役員の職務内容、法人の収益、従業員給料、同業他社の状況などからみて相当と認められる金額を超える金額

 (ロ)  形式基準……定款の規定、株主総会の決議等で役員報酬支給限度額を定めている法人の支給した役員報酬が、その限度額を超える部分の金額

 定款の規定又は株主総会の決議で取締役報酬の限度額を定めていない場合、税法上は(ロ)の形式基準の適用はなく、(イ)の実質基準だけが適用されますが、商法上、取締役報酬の限度額を定めないでおくことはできませんので(商法269)、ご質問の場合のように株主総会の決議で定めておくのが通例です。

 さて、Aについて出向元法人へ支払う30万円が貴社の負担すべき出向者給料として妥当な額であれば、この30万円は貴社の役員報酬となります(法基通9−2−33)。そこで、この30万円を貴社が他の取締役に支給されている報酬月額280万円に加えますと、取締役報酬限度額300万円を10万円超過しますので、上記(ロ)の形式基準が適用され、当該10万円部分は損金の額に算入されないことになります。

 つまり、たとえ経営指導料という間接的支払方法をとっていても、それが出向役員の報酬に該当する場合は、実質基準に照らして妥当な金額であっても、形式基準によって損金不算入額が生じることがありますのでご注意ください。

 なお、仮にAが取締役営業部長のような使用人兼務役員で、かつ、株主総会決議等において取締役報酬には使用人兼務取締役の使用人分給料を含まない旨が定められている場合は、当該30万円のうち使用人分給与部分を除く額が役員報酬となりますので、ご質問の場合は通常損金不算入額が生じないと考えられます。この場合は、取締役報酬部分と使用人分給料部分を、明確に区分して経理しておくことが必要です。

 

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