目次 III-4


4 出向者に対する給与の支給形態(2)
−出向元及び出向先の双方から給与を支給する場合


Question

(1)  出向先法人は出向者Aに対し自らの給与水準に基づいて毎月25日に25万円を支給しており、同日、出向元法人は自社でのAの給与水準30万円との差額5万円をAに直接支払っていますが、税務上問題ありませんか。

(2)  差額5万円を出向元法人からAに対して直接支給せず、いったん出向先法人に支払い、出向先法人が自社負担分25万円と併せて支給する方法をとった場合はどうですか。



Answer

 出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補てんするため出向者に対して支給した給与の額は、出向元法人の損金の額に算入されます。この点は、当該較差補てん金を出向先法人を経て支給した場合でも変わりません。よって、(1)及び(2)のいずれも税務上問題ありません。


 ◆給与の較差補てん金は損金算入

 出向元法人が出向先法人との給与水準の較差を補てんするため出向者に対して支給した給与の額は、当該出向が出向元法人の必要に基づくものであり、かつ出向者Aは出向元法人との労働協約等により出向元法人ベースでの給与を受給する権利があることから、出向元法人の損金の額に算入されます(法基通9−2−35)。この点は当該較差補てん金を出向先法人経由で支給した場合でも変わりません。

 ご質問の場合は下図のようになりますが、いずれの場合も税務上問題ありません。

  ● (1)の場合


  ● (2)の場合

 (2)の場合で、仮に較差補てん金として15万円を支払いますと、その適正額5万円を超える10万円部分は法人税基本通達9−2−35にいう給与条件の較差補てん金とはいえませんから、その実態に従って税務上の判断をすることになります。このため、場合によっては出向元法人から出向先法人に対する経済的利益の供与、すなわち寄附金として取り扱われることもあるでしょう。

 なお、出向元法人の負担する較差補てん金は一般管理費の給料として処理することになりましょう。出向者が出向先法人で働いているため出向元法人で給料勘定とするよりも、出向先法人に対する援助金とする方がふさわしいという考え方もありますが、出向者は出向元法人に在籍しており、出向元法人ベースでの給与を受ける権利があるのですから、給料勘定とするのが適正です。

 (注)  本問の(1)の場合、出向者は出向先法人と出向元法人の2か所から給与の支払いを受けますので、その支払額の少ない出向元法人を従たる給与の支払者とし、出向先法人からの受給額は甲欄適用、出向元法人からの受給額は乙欄適用により所得税の源泉徴収を受けることが必要です。

 

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