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3 出向者に対する給与の支給形態(1) −出向元ベースでの給与支給 |
出向先法人が、自らの給与ベースより高い出向元法人ベースでの給与を支給しても特に問題ありません。ただし、計算根拠が出向元法人の給与体系によっていることをはっきりさせておくべきです。
従業員の給与は労務提供の対価ですから、その提供を受ける法人が給与を負担するのが原則です。出向者は専ら出向先法人のために仕事をするのが普通ですから、出向先法人での労務提供に応じた給与を、出向先法人の負担で支給するのが原則となります。この場合の支給額は出向条件によって異なりますが、出向先法人の給与規程に従って支給されるなら、出向先法人の一般従業員と異ならないわけで、何ら問題ありません。 ところが出向元法人の出向規程等には、出向者に対しても自社の給与ベースを適用する旨が通常記載されており、また、出向先法人の給与ベースは出向元法人のそれよりも低い場合が多いので、ご質問のように、出向先法人では自社の規程によるよりも高い給与をAに支給する場合が生じます。 しかし、出向者には出向元法人との労働協約に基礎を置く出向規程等により、出向元の給与規程に基づく給与を受ける権利があるため、税務上も出向先法人の給与体系によるべきだとはされていません。したがって、Aに出向元法人ベースでの給与を支給しても特に問題ありません。ただし、計算根拠が自社の給与ベースとは別であることをはっきりさせておくべきでしょう。 なお、Aが出向先法人で役員になっている場合には、税務上、役員報酬についての一般的取扱いが適用されることになります。 またAが出向先法人の役員と特殊関係のある使用人である場合、過大な使用人給与の損金不算入の規定(法法36の2)が適用されますが、本問のように、出向元法人ベースでの給与の支給による出向先法人ベースでの給与を超える額は、その支給について相当の理由がありますので、この規定の対象にはなりません。 |