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7 出向者からの復帰要求 |
出向先へ復帰させないことを予定して出向が命じられ、出向者がこれに同意しているなどの特段の事由がない限り、出向規定や出向命令書等で決められている出向期間満了や出向目的達成によって、出向者は出向元に復帰請求を行えます。
出向期間と概括的出向目的は、出向元の出向規定・出向に関する労働協約等で定められています。また、具体的に出向を命じる際に出向元から出向者に出される出向命令書には、具体的な出向目的、出向期間、出向先での業務内容が記載されています。 出向規定等や出向命令書の内容から、復帰があり得るのか、また、その時期はいつになるのかは決まってくることになります。 ただし、期間の点については、出向規定等や出向命令書で、「3年間を目途とする」とか「3年間とする。ただし、出向目的の達成状況によって出向期間を延長又は短縮することがある」といったように、弾力的な運用ができるようになっていることがよくあります。 このように出向期間が不明確な場合は、出向目的と出向先での業務内容、これまでの慣行の出向期間などの総合判断で復帰時期が決まることになります。
出向期間が明確に定められていれば、その期間満了によって、出向者は出向元に復帰を求めることができます。明確な出向期間の定めがない場合の復帰について、以下説明します。
出向は、(1)の形態を除いて復帰を前提にしていますので、出向期間があまりに長期化すればそれだけで復帰時期到来と考えてよいでしょう。 また、出向目的達成が客観的に認定できる場合には、3年ないし5年程度の期間経過で復帰請求をし得ると考えてよいでしょう。
決められた出向期間の満了や出向目的達成と客観的に評価される期間が経過しても、正当な事由がないのに出向元が復帰命令を出さない場合には、出向元に雇用契約上の義務違反(民法625)あるいは不法行為(民法709)ありとして損害賠償義務発生が問題となります。特殊な技術職の場合を除いて、特定の職場で特定の業務に就労させることを求める権利(就労請求権)は認められないとするのが判例・多数説の見解ですが、場合によっては、出向元での就労を求める権利(就労請求権)が認められることもあります。 出向規定例には「出向者を復帰させるときは、原則として元の職務に戻すものとする」とされているものがありますが、このような場合には、出向者から出向元に対する、出向元の元の職場での就労請求権が認められる可能性があります。 |